導入事例デジタルの生み出す双方向性が
地方行政の課題発見・解決を促進

石川県副知事

西垣淳子氏

この事例の製品
QUICK Data Cast

2022年7月、経済産業省官僚から石川県副知事に就任した西垣淳子氏。就任直後から「QUICK Data Cast」(QDC)を導入し、地方行政におけるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。 証拠に基づく政策立案)を推進しています。県や各市町のデジタル化を進める「デジタル化推進会議」のCDO(最高デジタル責任者)を務める西垣氏に、データ活用が地方行政にどのような変化をもたらすのか、市町におけるデジタル化の推進、意識改革の進め方などについて聞きました。

導入の効果とポイント

  • 「データを見る」意識づくりがデジタル化推進の素地
  • EBPMを行政課題発見のきっかけに
  • 県民に届くデータ、情報発信を目指す

Q.デジタル化推進において、QDCはどのような役割を果たしていますか。

石川県に来て最初にしたことが、QDCを使って「まずはみんなでデータを見てみよう」という意識作りです。そもそも行政を進めるに当たってデータに基づいて考えるという習慣がない状況下で始めました。QDCがなかったら、県庁内の職員に対して、行政にデータを活用しようと働きかけるすべもなかったと思います。やはり百聞は一見に如かず、ですから。

これまで行政は、「決められたことを、決められたルールに従ってやる」というルールの下に、いかに公平、大量かつ迅速に行政サービスを提供するかということを前提にしてきました。データが見えないなかでの経験や先例主義、長年携わってきた人の知恵や、話し合いというアナログな方法を前提として、ルールや仕組み、物事の考え方、進め方ができあがっています。ありとあらゆる行政の手法がアナログ時代に確立しているので、そこにデータに基づいて真実を見極めるという要素は入ってこなかったのです。

しかし、デジタルによって双方向でいろんなものが見えてくると、行政の前例踏襲や無謬性、形式主義的なものはデジタルとは実はもう全く合わなくなっているということがわかってきました。それにもかかわらず、「日本はIT化するのだ、デジタル化するのだ」と言って、根本はそのままに表面だけをなんとなく変えて、あたかもデータに基づく行政をやっているかのようなことが続く点に、違和感を覚えていました。ここにきて、国レベルではEBPMを取り入れることでデータに基づく議論をする土壌が生まれ、そうした違和感を払拭する仕組みが少しずつ整ってきています。

一方で、石川県に来たら、それが全くなかった。EBPMを推進する施策も雰囲気もないなかで、いかにエビデンスの必要性を広めていくかについて大変さを感じました。ただ、県庁職員はEBPMに抵抗しているわけではなく、そもそもEBPMという手法自体を知らないのです。今までデータに基づいた行政を行ってきていないし、データから見えることと、自分たちのやっていることが合ってないということに気づくきっかけがそもそもなかったのです。県庁内のデジタル化を進めるにあたり、CDOに就任する前からQDCを使ってデジタル化の議論を始める素地を少しずつ作ってきました。

デジタルの最大の恩恵は、発信するとそれに対する反応が戻ってくるという双方向性にあると考えています。データに基づくことで、発信している行政の内容に対する県民の反応が見られるし、観光であれば観光客の反応も分かる。そこから、従来の決められた通りにやるという行政手法をデータに基づいて考え直す機会が生まれてきています。QDCの活用により、新たに入ってくるデータと、既に見えているものを掛け合わせることで、新たに別のものが生まれてくるというさらなる進化にもつながっています。

Q.デジタル化の推進は、石川県の行政にどのような影響を与えているのでしょうか。

県は、市町村のような基礎自治体でもなく、国でもない。その中間にいるので、リアルな課題に直面することが実は少ないという特殊性があります。ゆえに、行政が本当に県民のニーズに応えられているのかと自問するきっかけもあまりないのが実情です。県民の課題を見つけるとか、課題に向き合うという訓練をやってきてないわけです。

今回、QUICKとの連携の中で、エビデンスと実際にやっていることとの違いをデータに基づいて洗い出していくことが必要だという意識が県庁の中に広まってきています。データに基づいて課題を見せられること自体が驚きでしょうが、実際に目の当たりにすると、行政官は課題解決策を考えるのは得意なので、変えなければという意識が芽生えます。さらに、「こういうデータがあればいいのに」「このデータがないから集めなきゃ」といったアイデアもどんどん出てきて、そのデータを集めるためには、どういう発信をして、誰からそのデータを集めてくるのかという双方向性のような話にも発展したりしています。

各市町のデジタル化では、例えば県内19市町と石川県のLINEを比べると、市町のLINEはリアルな情報提供をしていることが分かります。LINEによって、市民や町民から来た声に対応した新しい情報提供が始まっていて、ある意味それはデジタルを通じた課題の発見であり解決になっています。ところが、デジタル化というと、市町からは「全然やっておりません」という答えが返ってきます。デジタル化というと、なにかすごいものがやってくるという意識があるようなのですが、実はLINEというデジタルな手段で双方向のやりとりが既に始まっているのです。

デジタルに対する発想を変えるところから始めるしかないのですが、行政の難しい点は、それを県庁内だけでなく、県議会にも分かってもらわないといけない。議会すなわち県民なので、県民にも分かってもらわないと変えられないわけです。県庁はデータなどの情報をたくさん持っていて、ウェブ上でも公開していますが、どんなにいいものでも、見てもらえないと意味がありません。「見える化」と言いますが、ただ見えるようにどこかに置いておけばいいわけではなく、関心を持ってもらえるよう、必要な層にちゃんと届くようにしなければならないと思います。幸い、(馳浩)知事に発信力があるので、Twitterなど今までやったことがない手法に県庁のみんなでトライして、デジタルを通じて県民に見える化したものをどうやって届けるか模索しているところです。

Q.今後のEBPMの進め方についてお聞かせください。

市町との関係では、県の持っているデータは、実は市町から提供してもらうデータが多くを占めています。市町から提供してもらったデータを県がより使いやすい形にして返す、市町は県が加工しやすいようフォーマットをあわせて提供するといったデータの好循環を作りたいと考えています。

行政を進める上でデータを分析していると、もっとこういうデータが欲しいというニーズも出てきます。逆にせっかく集めて発表しているのに全然使っていなかったデータがあれば、使わなきゃダメだ、あるいは不要なデータを集めているのではという議論にもつながります。さらにEBPMは、これまで知恵や経験に基づいて集めていたエビデンスが果たして正しいのかという検証にもつながります。例えば、産業動向について業界団体からの聞き取りに基づいて行政の方向性を決めていたけれども、それはエビデンスとして本当に正しいのか。結果として、データに基づくエビデンスと、従来の聞き取りに基づいたエビデンスは同じ方向を指し示しているかもしれないし、違っているかもしれません。そうした検証はこれまでしてきていないので、EBPMはそのきっかけにもなると思います。

北陸三県の知事は交流が盛んで、情報交換も活発です。お互いの良い例を紹介しあい、良い点を習いに行きましょうとなったりするわけです。私も福井県や富山県の副知事に会いに行って情報の共有や交換をしていますし、三県がお互いに影響し合い、お互いに県民サービスの向上に向かっていくというのが良い方法かなと思っています。

 

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