導入事例海外知名度高め海外投資家にアプローチ
データ分析でターゲティングの精度向上

日清食品ホールディングス IR室

阪本康平氏
二宮利夫氏
木村麻奈美氏

※写真左から
ご利用中の製品
QUICK FactSet Workstation

IR戦略のなかでも、国内投資家のみならず海外機関投資家へのアプローチ活動を重視する日清食品ホールディングス。海外投資家のターゲティング調査などにグローバル金融情報サービス「QUICK FactSet Workstation」(QFW)を活用しています。自社でのデータ分析は海外IR活動にどのような効果をもたらしているのでしょうか。海外市場のシェア拡大に向けた活動、海外投資家比率を高める上での課題、今後の展望などをIR室次長の二宮利夫氏に聞きました。

導入の効果とポイント

  • 海外投資家のターゲティングリスト作成に活用
  • 証券会社など外部からのデータ・情報の検証に有用
  • 原料の海外市場での値動きをタイムリーに把握

Q.現在、注力しているIR活動についてお聞きします。

当社は今後10年間を見据えた中長期成長戦略として、海外即席めん市場におけるシェアを高める活動を軸の一つに置いています。国内の即席めん市場では、日清食品とグループ会社の明星食品と合わせて約50%のシェアがあり、国内市場における大きな存在感を有していますが、少子高齢化、人口減少が進む日本市場は市場における成長性の面で限界があるのも事実です。

一方、海外では必ずしも我々がマーケットリーダーのポジションを確立している訳ではなく、また、即席めんの市場自体も地域によって大きく差があります。海外投資家比率を高めるというIR戦略において、最大の課題は海外での知名度を高めることと、投資家に事業を深く理解していただくことです。市場シェアは米国で約30%、ブラジルでは約60%を超えていますが、即席めんの消費量自体は日本ほど多くありません。また、近年順調に伸長してきた欧州地域も、そもそも即席めんを食べる文化が無い地域でした。海外地域においては、まずは当社の事業を理解していただくことが非常に重要であり、裏を返せば、挑戦できる大きな可能性を秘めているということです。海外地域については過去から取り組んできましたが、2021年5月に発表した中長期成長戦略において、具体的な定量目標を明示し、更なる成長を推進しているところです。

国内の投資家をQFWで分析すると、約9割がパッシブ運用、残り1割がアクティブ運用です。これが、海外では概ね半々とみており、IRで積極的に面談をし、実際にアクティブに株を買っていただけるのは、海外の投資家であろうという推定が成り立ちます。多角的に分析すると、海外投資家比率が高まる局面で株価が上昇する傾向が観測できています。当社は、海外でのプレゼンスが高いといわれる同業他社と比べて海外機関投資家の保有比率が低いのですが、戦略的ビジョンを考えると、大口の海外長期投資家にターゲットを絞るのが合理的だと考えています。

さらに、ここ数年の政策保有株式削減の一環で、金融機関が保有していた当社株式が実際に海外投資家へと移っています。海外投資家層を拡大するうえで、今後もこの流れは非常に重要になるでしょう。

Q.QFW導入のきっかけと、導入後の効果を教えてください。

導入前は、投資家情報とアナリストレポートそれぞれで別のサービスを使っていました。2つのサービスを使うのでコスト的に高くついていたところ、一本化できるご提案をいただいたのがきっかけです。システムを一本化することで、アクセス自体の手順が少なくなりました。アナリストレポートの入手も容易です。例えば、証券会社に委託してレポートを送ってもらう場合、受信するメールが増えて見落としがちになるデメリットがありました。その点、QFWは一元的に管理できるので、漏れなく確認することができます。

海外機関投資家のターゲティング調査についても、金融情報サービス大手の米FactSetがデータソースになっていることが多いので、データの大本にアクセスできるのは大きなメリットです。従前は、証券会社からターゲティングのための投資家情報をもらっても、情報自体の信頼性の検証が困難でした。そのため、複数社に同時依頼をして検証していましたが、これではお互いに生産性が上がりません。FactSetを使えば、自社でしっかりとデータ分析し、検証まで可能です。実際にQFWを使ってみると、かなり深いところまでデータ分析ができるので驚きました。検証作業にかける労力も半分以下になりましたし、自社でここまでできるのは「目からうろこ」の体験でした。

小麦やパーム油など即席麺の主原料の価格推移が追えるのも便利な点です。海外で価格が乱高下しているといった情報をタイムリーに知ることができます。担当部署に聞かずとも、QFWで流れがわかるので、「今、こういうことが起きているのだろうな」という仮説が立てやすくなりました。こうした情報は当然、投資家はチェックしていますので、本来のIR活動とは少し違いますが、役に立っている点です。

Q.今後の海外IR活動の展開をお聞かせください。

ターゲティングを証券会社任せにしてしまうと、我々が本来アクセスしたい投資家層と、証券会社がピックアップする投資家層にどうしてもギャップが生じることがあります。しかし、自社で収集したデータ分析でターゲットを絞り込むことで、このギャップを埋めることができるようになりました。

我々は、海外の大手投資家、特に、保有期間を5〜10年といったロングタームで見ていただける投資家にアクセスしたいので、そこに絞ってターゲットリストを作っています。証券会社には、このリストを基に希望を伝えた上でコンタクトをお願いしています。

ターゲット投資家の中でも最重要と考えている方との面談が入りそうな場合は、QFWで取ったデータをさらに高いレベルで再分析し、面談するタイミングまで含めて検討を加えています。
QFWで投資家の動きを追っていると、そこから得られる情報と、日々のIR活動のなかで直接聞いてきた話が符合する場面があります。そうすると、一気に関係性を深めるなど細かな動きが可能になります。定量的な分析と定性的分析という双方からのアプローチがつながって、それがまた定量的分析へと戻っていく、という繰り返しのなかで、より精度の高いIR活動へと発展させていきたいと考えています。

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