ESG研究所【サステナビリティ意識調査】(7)課題への取り組みにプレミアムを支払う人の関心は環境

 前回の(6)で説明したように、エシカル(倫理的)消費意識を価格との関係から、「①値段に関係なく買う」「②1~2割程度までなら高くても買う」を選んだ人を、企業のサステナビリティ課題への取り組みにプレミアムを支払う「エシカル消費先進群」、また、「③同じ値段なら努力している企業の方を買う」を選んだ人を、購入時にサステナビリティを一定程度考慮する「エシカル消費検討群」に分類した。

 サステナビリティ課題10項目(①環境負荷、②水、③森林、④生物多様性、⑤人権、⑥労働環境、⑦地域貢献、⑧税の透明性、⑨組織の多様性、⑩ガバナンス)それぞれ、「エシカル消費選好群」と「エシカル消費検討群」の割合や、世代間・男女間の意識の違いを調べた。

 「エシカル消費先進群」では、サステナビリティ課題10項目の中で生物多様性が1位になった。つまり生物多様性に配慮している企業の商品やサービスは値段に関係なく、あるいは、1~2割程度前なら高くても買うという人の割合が、10項目中でトップだった。50代以上では男性より女性の方が環境課題を選ぶ傾向が強いことも分かった。女性は生物多様性への関心が高く、20代と30代で1位、40代と50代、70代で2位となった。

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(注)本連載で使用する図表はレポートから抜粋しており、図表番号もそのまま転載する

 投資リターンよりもESGを優先する「ESG投資選好群」では人権が1位になるなど社会課題への関心の高さが目立ったが、「エシカル消費先進群」では主に環境関連課題が上位となった。ESG投資とエシカル消費で、重視するサステナビリティ課題の傾向が違うのはなぜか。回答者が実際に購買したものとして、途上国の生産者に配慮するフェアトレード認証の商品より、エコマークなど環境ラベル付きの商品を思い浮かべたのが1つの理由ではないかと考えられる。

 一方、「エシカル消費検討群」は、男性の20代~40代では社会課題、50代~60代では環境課題が多くなり、「エシカル消費先進群」の傾向と異なる結果になった。女性でも、全世代を通して社会課題が上位を占めた。サステナビリティに配慮した商品・サービスを販売する企業にとっては「エシカル消費検討群」の取り込みが課題になるだけに、こうした違いについて、今後さらなる調査を進めていく必要があるだろう。=調査の集計結果は終わり、(8)に解説

■調査の概要

  • 名称:QUICKサステナビリティ意識調査2021
  • 目的:個人が投資や購買にあたりサステナビリティをどの程度考慮しているか、男女別、世代別に意識の違いを明らかにして、金融商品やサービス開発の参考情報を提供する。
  • 期間:2021年7月16~20日
  • 対象:全国の20~70代の個人。内訳は20代517人、30代509人、40代509人、50代504人、60代503人、70代514人。
  • 方法:調査を委託した日経リサーチが、登録しているモニターのうち20代から70代まで10歳刻みで年代別に男女それぞれ250人以上になるように募集し、ウェブサイト上の「アンケートフォーム」を通して回答を得た。

※「サステナビリティ意識調査2021」のリンクはこちら

QUICK リサーチ本部 ESG研究所