ESG研究所【サステナビリティ意識調査】(5)投資リターンよりもESGを優先する人は人権などに関心

 前回の(4)で説明したように、環境・社会・企業統治の課題への取り組みを重視する「ESG投資」に関する個人の意識について、リターンよりESGを優先する人を「ESG投資選好群」、また、リターン次第で企業の取り組みを考慮する人を「ESG投資検討群」と分類した。

 サステナビリティ課題10項目(①環境負荷、②水、③森林、④生物多様性、⑤人権、⑥労働環境、⑦地域貢献、⑧税の透明性、⑨組織の多様性、⑩ガバナンス)それぞれ、「ESG投資選好群」と「ESG投資検討群」の割合や、世代間・男女間の違いを調べた。

 「ESG投資選好群」では10項目の中で人権が1位になった。つまり人権に配慮している企業にはリターンにかかわらず、あるいは、リターンが多少見劣りしても投資するという人の割合が、10項目中でトップだった。男女ともに、20代では生物多様性だが、30代~50代では人権が1位となるなど社会課題に関心が集まった。

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(注)本連載で使用する図表はレポートから抜粋しており、図表番号もそのまま転載する

 一方、「ESG投資検討群」では、水が1位、次いで森林、生物多様性と主に環境関連課題が上位となった。男女別、世代別では、30代以上の男性の上位1~3位、20代~60代女性の1位は全て環境課題となった。

 「ESG投資検討群」よりも「ESG投資選好群」で社会課題に対する関心が高いのは、最近の企業の人権配慮の取り組みに対する報道が影響していることが一因だろう。新疆ウイグル自治区やミャンマーにおける人権侵害の疑いを受けた企業の事業撤退、機関投資家の投資撤退が報じられた。サステナビリティ課題への関心がより強いと考えられる「ESG投資選好群」では企業の人権に対する取り組みは投資判断において考慮すべきという認識が深まっている可能性がある。=(6)に続く

■調査の概要

  • 名称:QUICKサステナビリティ意識調査2021
  • 目的:個人が投資や購買にあたりサステナビリティをどの程度考慮しているか、男女別、世代別に意識の違いを明らかにして、金融商品やサービス開発の参考情報を提供する。
  • 期間:2021年7月16~20日
  • 対象:全国の20~70代の個人。内訳は20代517人、30代509人、40代509人、50代504人、60代503人、70代514人。
  • 方法:調査を委託した日経リサーチが、登録しているモニターのうち20代から70代まで10歳刻みで年代別に男女それぞれ250人以上になるように募集し、ウェブサイト上の「アンケートフォーム」を通して回答を得た。

※「サステナビリティ意識調査2021」のリンクはこちら

QUICK リサーチ本部 ESG研究所