ESG研究所投資家が注目すべきCOP24の4つの重要ポイント-PRIのプレスリリースより-
2019年01月10日
2018年12月2日から15日にポーランド南部の都市カトウィツェで第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(以下、COP24)が開催された。COP24に集まった締約国約200か国は、延長を含め2週間におよぶ交渉の末、2015年に成立したパリ協定をどのように実施していくかの詳細な実施指針(以下、ルールブック)を採択した。
国連責任投資原則(以下、PRI)は機関投資家が注目すべき重要な 4つのポイントをまとめ、記事を公表した。
- 運用資産総額32兆米ドルを抱える400超の機関投資家が求めていた、パリ協定の実施ルールが採択されたことは歓迎すべき成果であり、パリ協定の実施プロセスに対する投資家の信頼は高まるとみられる。ルールブックには主に以下の内容が盛り込まれた。
- 国別目標(NDC)で何を報告し、どのように進捗をはかるのかの指針
- 気候関連財務情報の報告指針(統一されたルール)
- パリ協定の実施状況の定期的な確認を、どのような情報をもとにどう行うのか(グローバル・ストックテイクに関する事項)
- 国別目標の遵守状況のモニタリング
- COP24開催に先駆けてIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書が「タイムリーに」発表された。ルールブックではこの報告書について触れ、各国にその内容を今後の議論に活用するよう呼びかけている。COP24の序盤では、このIPCCの報告書を「歓迎」する動きに米国、サウジアラビア、ロシア、クウェートが異議を唱えるなど、意見の対立があっただけに、ルールブックの採択は大きな成果といえる。COP24では、EUが2050年までに低炭素経済に移行する道筋を記した EU 2050ロードマップ、 脱炭素社会に向けた公正な移行(Just transition)の重要性を指摘したシレジア宣言(ポーランドが主導し、45か国の政府が署名)、 脱石炭同盟(現在の参加メンバーはシドニー市およびメルボルン市を含む80の政府、企業、団体)などのテーマについて議論がなされ、進展が見られた。特にPRIは、社会問題や公正な移行(Just transition)を議題にすることを強く求めていた。
- 一方、投資家は各国政府に対してより高い野心的な目標の設定を求めていた。各国政府が示した野心的目標は、IPCC報告書の指摘事項が求めるレベルには達していないなど、PRIが「The Inevitable Policy Response」と呼ぶ気候変動対策の推進に各国政府が急ブレーキをかけざるを得ない状況になる可能性がある。炭素価格の導入や需要・供給サイドの政策などが求められる。
- 各国政府は気候変動対策に向けた野心的目標を早急に高める必要がある。その機運を高める上で、2019年9月にパリで開催されるPRI in Personと、その2週間後に開かれる国連の「気候サミット」が重要な意味を持つ。各国が2020年に提出する2回目の自国目標(NDC)の策定準備を進める礎となるからだ。
PRIは記事の中で、企業と投資家も化石燃料の段階的廃止、労働者および地域コミュニティのための低炭素社会への公正な移行(Just transition)、低炭素投資の拡大を促進する必要がある、と述べている。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の分析によると、テクノロジーコストの急速な低下に伴いクリーンエネルギーの成長余地は急拡大している。具体的には、太陽光および風力の均等化発電原価がそれぞれ14%、6%低下したことで、2020年までに米国内だけで30GW相当を超える新規事業が計画されるなど、クリーンエネルギーの導入件数は過去最高をうかがう伸びを見せている。最近では、ニューヨーク州退職年金基金などの投資家はすでに低炭素投資を拡大する意向を示しており、COP24開催までに30億ドルを持続可能な投資に振り向けた。ロイヤル・ダッチ・シェルは気候変動への対応を働きかける投資家イニシアチブである「Climate Action 100+ (以下、CA100+)」によるエンゲージメントを受け、二酸化炭素排出量(スコープ3排出量を含む)の削減に向けた「野心的な長期目標」の設定を約束した。
PRIは投資家による気候変動対策のさらなる強化を支援するため、2019年は特に「The Investor Agenda」(パリ協定の2℃目標達成に向け投資家が起こすべき行動をまとめたガイダンス)、「CA100+」、公正な移行(Just transition)、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、「The Inevitable Policy Response」に重点的に取り組むとしている。
関連サイト
Principles for Responsible Investors「COP24: the PRI’s four key takeaways for global investors」2018年12月18日(2019年1月10日情報取得)
QUICK ESG研究所 小松 奈緒美