ESG研究所人的資本の株価指数、31銘柄入れ替え 新構成銘柄のスコア順位は?

JPX総研と日本経済新聞社は8月22日、7月22日から新たに算出を始めた「JPX日経インデックス人的資本100」(以下、JPX日経HC100)の構成銘柄の定期入れ替えで100銘柄のうち31銘柄を入れ替えると発表した。8月の最終営業日である29日から実施される。新たな構成銘柄の人的資本スコアをランキングした。

人的資本に着目した新しい株価指数であるJPX日経HC100は、毎年6月最終営業日を基準日として、毎年8月最終営業日に構成銘柄の定期入れ替えが実施される。同指数は「JPX日経インデックス400」(以下、JPX日経400)が母集団であり、その中からESG評価機関であるESGブックの「人的資本スコア」に3項目を加点した「総合人的資本スコア」が高い100銘柄が選ばれる。

JPX日経400の2025年の定期入れ替えは8月7日に発表済みであり、同指数から除外されれば、JPX日経HC100からも外れることになる。JPX日経HC100の現構成銘柄のうちJPX日経400の構成銘柄から除外されるのは、資生堂(4911)、AGC(5201)、ナブテスコ(6268)、太陽誘電(6976)、NTTデータグループ(9613)の5社だ。

ESGブックはSASB(サステナビリティ会計基準審議会)の基準を考慮して「ESGパフォーマンススコア」(トータルスコア)のほか、5つのディメンション(領域)スコアを算出しており、5領域の1つが人的資本スコアだ。人的資本スコアは100点満点で数値が高いほど優れていることを示す。スコアには企業の公開データを使って算出する「コア」スコアが使用される。

加点3項目は、①女性管理職比率が30%以上、②従業員平均年間給与の成長率がJPX日経400構成銘柄の上位10%、③従業員1人当たりの営業利益成長率が同上位10%――で、それぞれ満たす企業に5点が加わる。人的資本スコアは100点満点なので、最高は115点になる計算だ。

JPX日経HC100の入れ替え後の100社のESGブックによる人的資本スコアをランキングした。QUICK の情報端末(QUICK Workstation Astra Manager)の 「レポート」機能を使い、データ日付が6月30日のESGブックの「コアスコア」から「ディメンションスコア人的資本」を選択してダウンロードし、作成した。

 

 

 

人的資本スコアが80点以上だったのは7社で、このうち横河電機(6841)が新たに採用される。70点以上80点未満は40社あり、日本ガイシ(5333)、大成建設(1801)、日立建機(6305)、ADEKA(4401)、レゾナック・ホールディングス(4004)、京王電鉄(9008)、東ソー(4042)、ANAホールディングス(9202)、アズビル(6845)、TOYO TIRE(5105)が加わる。60点以上70点未満は52社と10点刻みでは最も多く、50点以上60点未満は1社だった。

JPX日経400の入れ替え後の全構成銘柄400社をランキングすると、60点以上が159社あり、50点台や60点台で採用された企業は女性管理職比率などの加点項目が総合人的資本スコアを高めたものとみられる。JPX総研と日本経済新聞社によると、加点銘柄数は女性管理職比率が7銘柄、従業員平均年間給与の成長率は14社、従業員1人当たりの営業利益成長率は12銘柄だった。

JPX総研と日本経済新聞社は加点のあった個別銘柄名を公開していないが、直近に提出された有価証券報告書で例えば「管理職に占める女性労働者の割合」を調べると、加点銘柄を推測できる。サンリオ(8136)の女性管理職比率は44.4%、アシックス(7936)の同社と連結子会社の女性管理職比率は39.5%といった具合だ。人的資本経営に対する関心が高まる中、人的資本の評価の優れた銘柄で構成する株価指数がどう推移するか注目を集めそうだ。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)