ESG研究所【ESGブック】株価指数「JPX日経HC100」の人的資本スコアに見る短期的変化

【ESGブック】株価指数「JPX日経HC100」の人的資本スコアに見る短期的変化

今回も引き続き、JPX日経インデックス人的資本100(以下、JPX日経HC100)について分析する。同指数の基礎となる人的資本スコア(ESG Performance Score Core – Dimension Human Capital Score、ESGブック提供)は現在、2025年6月30日時点のスコアを採用している。そこから3カ月以上経過したため、9月30日時点のスコアの状況を確認する。

 

■スコア平均の変化は小さいが、上位20社の順位に変動

人的資本スコアは、日本企業に限らず、対象となる世界約9000社のサステナビリティ関連の開示情報を収集・評価して算出される。企業の開示時期は国によって異なるため、情報は年間を通じて収集・評価され、スコアは毎日更新されている。そのため、3カ月という短期間であっても、日本企業の人的資本スコアに変化が見られる可能性がある。

 

 

表1では、2025年6月30日時点と9月30日時点における、JPX日経インデックス400(以下、JPX日経400)およびJPX日経HC100の構成銘柄の平均スコアを比較している。

  • EPSコアスコアは、JPX日経400で−1.25、JPX日経HC100で−1.92と、いずれも低下している。
  • 人的資本スコアは、JPX日経400で+0.03とわずかに上昇した一方、JPX日経HC100では−0.35とわずかに低下している。

このように、上昇と低下の両方が見られたが、いずれも数値としては小幅な変化にとどまっている。

 

 

次に、JPX日経HC100の構成銘柄のうち、上位20社のスコア変化を確認する(表2参照)。

  • 企業の入れ替え:25年6月30日時点で18位のニチレイと19位の住友林業が、それぞれ21位、25位に順位を下げた。一方、同日時点で21位であった明治ホールディングスと23位であった日立建機が、9月30日時点ではそれぞれ15位、20位に上昇した。
  • 順位変動なし:上位4社を含む7社は、順位に変化がなかった。
  • スコア変動:20社中8社が1ポイント以上のスコア変動を示しており、最も大きかったのはユニ・チャームの+4.05と三井物産の−2.32であった。

3カ月という短期間ながら、上位20社でも2社の入れ替えがあったことから、1年単位で見た場合や、構成銘柄全体(100社)で見た場合には、より大きな変動が起こる可能性がある。今後も定期的にスコアの推移を確認していく方針である。

 

■9月22日から1カ月間の株価、AIシグナルは一定の成果

最後に、25年8月27日(注1)および9月25日の記事(注2)で取り上げたESGブックの兄弟会社「アラベスクAI」による、JPX日経HC100の構成銘柄に対するAIシグナル分析のフォローアップを行う。

◎25年9月22日時点のAIシグナル(50%超)
株価上昇確率が50%を超えた銘柄は以下の11社である:

  • KDDI(63.75%)
  • 東北電力(59.42%)
  • 商船三井(54.69%)
  • マツダ(54.59%)
  • JFEホールディングス(52.81%)
  • ユニ・チャーム(52.50%)
  • 日本郵船(52.13%)
  • 双日(51.40%)
  • アサヒグループホールディングス(51.24%)
  • ニチレイ(51.15%)
  • INPEX(50.34%)

このうち、9月22日終値と10月22日終値を比較して株価が上昇したのは、双日、INPEX、ニチレイ、ユニ・チャーム、マツダ、KDDIの6社であり、AIシグナルの精度は一定の成果を示したと評価できる。

◎25年10月22日時点のAIシグナル(60%超)
今回は、株価上昇確率が60%以上の銘柄に絞って注目する。対象企業は以下の11社である:

  • 東北電力(80.85%)
  • ダイセル(72.42%)
  • 双日(68.61%
  • 関西電力(68.30%)
  • 東京海上ホールディングス(67.82%)
  • KDDI(67.42%)
  • 日本製鐵(65.34%)
  • 日産化学(64.01%)
  • オリックス(62.00%)
  • JFEホールディングス(61.86%)
  • アサヒグループホールディングス(60.05%)

次回の寄稿でも、引き続きこれらの企業の株価推移とAIシグナルの精度について報告する予定である。

(注1)25年8月27日の記事
【ESGブック】リバランス後の人的資本スコア分析 株価指数「JPX日経HC100」
(注2)25年9月25日の記事
【ESGブック】人的資本スコアの国際比較と日本企業の特徴

 

ESGブック(アラベスクS-Ray 社)日本支店代表 雨宮寛