ESG研究所【ESG投資実態調査2021】(3)価値評価に「事業モデルの強靭性」など定性面組み入れ
2022年01月21日
QUICKリサーチ本部ESG研究所は2022年1月20日、日本に拠点を置く投資家のESG(環境・社会・企業統治)投資の実態を明らかにするために実施した「ESG投資実態調査2021」を公表した。集計結果の最終回はESG投資手法を取り上げる。
《ポイント》
- ESG投資の手法は「ESGインテグレーション」が最も多く、「エンゲージメント(対話)」、「議決権行使」が続いた。ESGインテグレーションは個別企業の投資評価の段階で組み入れられるケースが大半を占めた。
- 個別企業の価値評価に組み入れられる非財務情報は「サプライチェーンの対応状況も含めたES課題に関するビジネスモデルのレジリエンス(強靭性)」が最も多かった。
(図表)実施しているESG投資手法(複数選択可)
(注)グラフの※は前回からの選択肢変更で、前回の「エンゲージメントと議決権行使」を今回は「エンゲージメント」と「議決権行使」に分割、前回の「インパクト投資・コミュニティ投資」を今回は「インパクト投資」に変更
前回調査と同様に投資手法別で最も多かったのは「ESGインテグレーション」(有効回答社数の87%。以下すべて設問ごとの有効回答社数に対する割合)で、「エンゲージメント」(83%)、「議決権行使」(78%)が続いた。
ESGインテグレーションとは「ESG要因を投資分析及び投資決定に明示的かつ体系的に組み込んだ投資」のことを指す。全資産あるいは一部資産についてESGインテグレーションのフレームワークを構築しているという回答が大半を占めた。
ESG投資の運用プロセスのどの段階で組み入れているかについては「個別企業の投資判断」が97%を占め、セクターアロケーションやアセットアロケーションでの組み入れは少数にとどまった。今後、これらの段階での組み入れが課題になる可能性がある。
個別企業の価値評価で組み入れている非財務情報については「サプライチェーンの対応状況も含めたES課題に関するビジネスモデルのレジリエンス」(65%)、「消費者ニーズや規制の変化をふまえた競争力の評価」(63%)、「ES課題関連ソリューションの提供や研究開発能力の評価」(53%)が上位を占めた。環境や社会の課題に関する定性面の評価を組み入れる投資家が多いことがわかった。
=集計結果はおわり、(4)に解説
《調査の概要》
- 名称:QUICK ESG投資実態調査2021
- 対象:「『責任ある投資家』の諸原則~日本版スチュワードシップ・コード~」の受け入れ表明機関の中から抽出した日本国内に拠点を置く機関投資家157社
- 回答社数:53社(うちアセットオーナー5社、アセットマネジャー48社)
- 期間:2021年8月23日~10月19日
ESG投資実態調査2021(要約版)はこちら
QUICK リサーチ本部 ESG研究所