ESG研究所【ESG投資実態調査2021】(2)6割強の機関が専門組織を設置

(注)2024年1月発行の「QUICK ESG投資実態調査2021(第2版)」に合わせて更新しました。

 

 QUICKリサーチ本部ESG研究所は2022年1月20日、日本に拠点を置く投資家のESG(環境・社会・企業統治)投資の実態を明らかにするために実施した「ESG投資実態調査2021」を公表した。集計結果の2回目は、ESG投資の将来像を取り上げる。

《ポイント》

  • 日本株運用全体に占めるESG投資の割合は有効回答社数の62%と、前回調査の68%から低下した。個別の会社の資産残高に占めるESG投資の割合は「90%以上」との回答が22社(52%=設問ごとの有効回答社数に対する各選択肢回答数の割合、以下同じ)となった。
  • 日本株の運用資産に占めるESG投資を5年後に増やす見通しと回答したのは9社(22%)。その要因は「自社の経営トップによるコミットメント」が最も多かった。
  • 責任投資やESGリサーチ、エンゲージメントなどの専門部門・部署を設けている会社が63%と前回調査から10ポイント増加した。
  • 責任投資活動の報告書に含める必要のある課題は「責任投資の中長期ビジョン」(78%)が最多だった。

日本株の運用資産残高と日本株を対象にしたESG投資残高

 日本株の運用資産残高全体に占めるESG投資残高の割合は62%と、前回調査の68%から低下した。現状の「ESG投資残高の割合」を10%刻みで尋ねたところ、回答した42社のうち22社(52%)が「90%以上」だった。一方、5年後の割合については回答した41社中、減らす会社はゼロで、9社(22%)が増やすと回答した。このうち1社は「現状の10%未満から5年後は50%以上60%未満に」、もう1社は「現状の10%以上20%未満から5年後は60%以上70%未満に」、それぞれ大幅に増やす見通しだ。

 ESG投資を5年後に増やす要因で最多の回答は「経営トップによるコミットメント」(78%)だった。「ESGファンドの増加 」(67%)、「自社ブランドの強化」、「リターンの獲得」(ともに44%)との回答が続いた。組織については、「責任投資やESGリサーチなどの専門部門・部署がある」が31社(63%)で最も多く、前回調査25社(53%)から増加した。経営陣が旗を振り、組織も整ってきているだけに、日本株のESG投資は増加する可能性がある。

 責任投資活動の報告書に含める必要のある課題は「責任投資の中長期ビジョン」(78%)のほか、「ビジョンに係る中長期目標」、「自社のマテリアリティ(重要課題)」(ともに53%)が過半数に達した。ESG投資残高の増加傾向が続く中で、機関投資家の間では中長期の戦略や目標などの開示が課題として意識されている。

=(3)に続く

《調査の概要》

  • 名称:QUICK ESG投資実態調査2021
  • 対象:「『責任ある投資家』の諸原則~日本版スチュワードシップ・コード~」の受け入れ表明機関の中から抽出した日本国内に拠点を置く機関投資家157社
  • 回答社数:53社(うちアセットオーナー5社、アセットマネジャー48社)
  • 期間:2021年8月23日~10月19日

ESG投資実態調査2021(要約版)はこちら

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