ESG研究所【サステナビリティ意識調査】(8)SDGsへの取り組みが生み出す価値について情報発信を
2021年12月17日
《解説》
QUICKリサーチ本部ESG研究所が今年初めて実施した「サステナビリティ意識調査2021」では、「若者の方がサステナビリティに対する関心が高く、SDGsの認知度も高い」というイメージが覆される結果になった。5歳刻みの人数がそろっていないので参考データだが、20代後半よりも20代前半の方がESG投資、エシカル(倫理的)消費ともに積極派が多く、同じ20代でも二極化しているようにも見受けられる。
投資行動では、リターン(利益)よりESGを優先する「ESG投資選好群」が全体の2割弱にとどまり、リターン次第で企業の取り組みを考慮する「ESG投資検討群」が5割強を占めた。個人投資家は銘柄選別にあたって、リターンも重視することが示された。つまり、ESG課題に適切に対応している企業でも、株価次第で投資対象にならない可能性があるということだ。
自由記述でESG投資は「胡散臭い」「綺麗事」との指摘があったことも見逃せない。収益性への疑問が認知度の低さにつながっている面もうかがえるだけに、こうした疑念を打ち払っていく努力も欠かせない。
購買行動では、サステナビリティ課題への取り組みにプレミアムを支払う「エシカル消費先進群」が2割にとどまった。同じ値段なら努力している企業を選ぶ「エシカル消費検討群」が5割弱を占め、エシカル商品であっても価格次第と考える人が多いのが現状のようだ。
そうだとすれば、サステナビリティに配慮した商品・サービスを普及させるには、価格を「普通の商品」並みに抑える努力が必要になるのだろう。一方で、エシカル消費の意義、商品の持つ価値についての情報を発信していくことも大切ではないか。日本では長年のデフレで、「良いものなら高くても買う」というマインドがやや薄れている面もあるかもしれない。財布のひもを緩めてもらうには、どんなに良いものなのか、価値をアピールすることも欠かせないだろう。
今回の意識調査ではESG投資もエシカル消費も浸透には道半ばという状況が示されたが、近年、学校教育の場でSDGsを学んだ子供も増えてきているようだ。気候変動やエネルギー、ジェンダー平等などを人類の普遍的な課題であると認識し、SGDsの知識や活用能力(リテラシー)を身に着ける人々がさらに増えていくことが見込まれる。
個人の目が肥えていく中で、ESG投資を進めたい金融機関や商品・サービスを売ったり、投資を受けたりしたい企業は、SDGsやESGの課題への取り組みが価値をどう生み出すのか、情報の発信力を高めることが欠かせないだろう。個人投資家や消費者のリテラシー向上につながるような活動に取り組んでいく必要もありそうだ。=おわり
■調査の概要
- 名称:QUICKサステナビリティ意識調査2021
- 目的:個人が投資や購買にあたりサステナビリティをどの程度考慮しているか、男女別、世代別に意識の違いを明らかにして、金融商品やサービス開発の参考情報を提供する。
- 調査期間:2021年7月16~20日
- 対象:全国の20~70代の個人。内訳は20代517人、30代509人、40代509人、50代504人、60代503人、70代514人。
- 方法:調査を委託した日経リサーチが、登録しているモニターのうち20代から70代まで10歳刻みで年代別に男女それぞれ250人以上になるように募集し、ウェブサイト上の「アンケートフォーム」を通して回答を得た。
※「サステナビリティ意識調査2021」のリンクはこちら
QUICK リサーチ本部 ESG研究所