ESG研究所【ESG投資実態調査2020】投資手法は「ESGインテグレーション」が最多で88%

 QUICK ESG研究所は、日本に拠点を置く投資家のESG(環境・社会・企業統治)投資の実態を明らかにすることを目的に「ESG投資実態調査2020」を実施した。今回が2回目の調査。日本版スチュワードシップ・コード受け入れを表明した機関投資家(156社)を対象に調査し、54社から回答を得た。調査期間は7月28~9月2日。

 現在実施しているESG投資手法では「ESGインテグレーション」88%と最多、また、自社開発を含む、ESGスコア・レーティングの利用が63%となり、ESG要因を積極的に投資判断に利用する動きが見られた。

 重視するエンゲージメントテーマは、「気候変動」が94%となり、「労働慣行」や「人権」がそれに続き、EおよびSのテーマへの関心が高まっている。

 

今後1年のESG投資、約14%の増加見通し

 日本株を対象にした運用資産残高全体に占めるESG投資の割合について、今後1年間で「増える」との回答は有効回答33社のうち61%に当たる20社に達した。現状維持との回答は13社(39%)だった。全体平均では約14%の増加見込みとなった。

 

ESGの専門部署を置く会社が過半

 責任投資やESGリサーチなど専門部門・部署を設けているとの回答は53%と過半数を超え、41%だった前回調査を上回った。「専門部門・部署はないが、各運用部門に専門人材を配置」は15%となり、責任投資・ESG投資に関する専門人材を多く配置する傾向が昨年に比べより強まっていることを示した。

 

投資手法、「ESGインテグレーション」が最多

 現在実施しているESG投資の手法(複数回答可)については、「ESGインテグレーション」との回答が88%で最多。次に「エンゲージメントと議決権行使」が85%で続いた。

 ESGインテグレーションのフレームワーク構築に関して、「構築している」が74%となり、「部分的に構築している」が23%で続いた。部分構築の具体的内容は、「特定資産」が75%となった。

 ESGインテグレーションにおける非財務情報をどのように統合評価しているかとの質問については、「非財務観点のスコア付け」が49%で最も多かった。

 

注目のエンゲージメントテーマ「気候変動」「労働慣行」「人権」

 2020年度に重視するエンゲージメントテーマとして、「気候変動」(94%)を筆頭に「労働慣行(健康と安全)」(62%)、「人権」(44%)をあげる声が多かった。新型コロナウイルス禍においてS(社会)に関する項目への関心が高まっていることが浮き彫りになった。

 エンゲージメント対象企業の選定基準については、「自社のポートフォリオの中でウエートの高い企業」「経営改善の余地が大きいと判断した企業」がともに68%で最多だった。

 

運用成果「中長期のリターンを求める」が最多

 ESG投資の運用成果について、「短期的なリターンはあまり重視せず、中長期のリターンを求める」が55%で最も多く、「経済的なリターンと社会的なリターンやインパクトのバランスを重視」が40%で続いた。「中長期だけでなく、短期的なリターンも重視」も19%となり、投資家の間でリターン重視の傾向が強まっている様子もうかがえる。

 

ESGデータ、「スコア(自社開発含む)を利用」6割強

 ESG投資に際して、調査会社や指数ベンダーなどのESGスコア・レーティング(自社開発含む)を「利用している」が63%で最多となった。また、「利用していないが検討中」が10%と回答し、ESGスコア・レーティングの利用が進んでいることが窺える。

 ESGスコア・レーティングを利用する際に重視する順に3つ選んでもらったところ、1番目に重視する点として、「レポートの質」と「ESG評価基準やメソドロジーの特色」がトップ。2番目に重視する点では「対象企業のカバレッジ数」が最多だった。

 

アセットオーナーのESG重視の傾向「強まっている」8割強

 アセットオーナーが運用委託の際にESGを重視する傾向は「やや強まっている」が50%で最多。次に「強まっている」(36%)が続き、両者の合計は86%となり、前回調査(84%)と同水準となった。

 

コロナ禍の企業行動、「ビジネスモデルの再構築」に関心

 コロナ禍において、投資家が重要と考える企業の行動について聞いたところ、最も重要との回答は「持続可能性を高めるためのビジネスモデルの再構築」が58%で最多となった。次に「環境変化への対応力」(18%)が続いた。

 

コード改訂、責任投資方針「見直した」4割

 2020年のスチュワードシップ・コード改訂に伴う責任投資における投資家の対応状況については、「責任投資方針の見直し」が42%と最も多く、「エンゲージメントのヒアリングテーマや項目の見直し」が29%で続いた。その他では「対応済み」との回答が多かった。

 

■ESG投資実態調査2020(要約版)はこちら

 

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