ESG研究所GCスコア、花王と積水化が6年連続トップ10
ESGブックの指標
2024年01月04日
ESG評価サービス「ESGブック」(旧アラベスクS-Ray)による国内企業の「GCスコア」を2018年から23年まで年末時点でランキングしたところ、6年連続で上位10社に入ったのは花王(4452)と積水化学工業(4204)の2社だった。同スコアは国連グローバル・コンパクト(UNGC)の10原則に沿って企業を評価する指標で、企業価値を毀損するようなレピュテーション(風評)リスクの判断に用いられる。
ESGブックはUNGCに沿って「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4つの主要課題に関する企業の開示情報のほか、ニュースや非政府組織(NGO)などの公開情報を組み入れてGCスコアを随時更新している。GCスコアのほか、4つの主要課題のサブスコアもそれぞれ100点満点で点数化する。スコアが高いほど優れていることを示す。ESGブックは今年11月にGCスコアの後継となる「リスク・スコア」を発表しており、GCスコアから移行する予定だ。
23年末の日本企業の首位は富士通(6702)、2位はコニカミノルタ(4902)、3位は京セラ(6971)だった。富士通は20年末、21年末、23年末と、過去6年間で3度首位になった。また23年末と18年末ともに上位10社入りしたのは富士通(18年末7位)のほか、京セラ(18年末首位)、TDK(6762、23年末5位、18年末4位)、花王(23年末6位、18年末3位)、積水化(23年末10位、18年末2位)の5社だった。
6年連続でトップ10入りした花王のウェブサイトの「ESG活動の基本方針」では、他の様々な指針や方針などと並んで「社会への宣言」としてUNGCが掲載されている。同社は2005年に参画し、「人権の保護」、「不当な労働の排除」、「環境への対応」、「腐敗の防止」に関わる10の原則への支持を表明した。19年4月にはESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を公開し、事業戦略にESGの視点を導入し、事業拡大とともに、よりよい製品・サービスの提供を目指している。
積水化の「サステナビリティレポート2023」によると、同社は09年3月にUNGCに署名した。またカナダのコーポレートナイツ社がESGなどの観点から企業の持続可能性を評価する「世界で最も持続可能性の高い100社(グローバル100)」に23年まで6年連続で選出されている。積水化は23年1月19日付のプレスリリースで、6年連続・通算8回目の「グローバル100」選出を発表。サステナブルレベニュー(環境貢献度または社会貢献度の高い製品・サービスの販売によって得た収益)、サステナブル投資(設備投資や研究開発)、サステナビリティと報酬の連動などの項目で高い評価を受けたと説明した。
環境や社会の課題への取り組みの高評価が株価上昇に結び付くとは限らない。花王の23年末(12月29日)終値は5800円と、18年末(12月28日)に比べ28.9%下落した。積水化の23年末終値は2032.5円と18年末比24.6%上昇したが、東証株価指数(TOPIX)の58.4%上昇や、日経平均株価の67.2%上昇に及ばない。GCスコアは評価機関の1つであるESGブックの指標に過ぎないうえ、株価には企業収益をはじめ、様々な要因が働くためだ。それでも企業価値やリスクを判断するうえで時系列データを追う意義はあるだろう。
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)