ESG研究所ESG投資実態調査2023②
手法別首位「ESGインテグレーション」

ESG投資実態調査2023

QUICK ESG研究所は2024年1月30日、「ESG投資実態調査2023」を公表した。集計結果の2回目はESG投資手法について取り上げる。

 

《ポイント》

  • ESG投資手法別で最多だったのは90%(設問ごとの有効回答数に対する各選択肢回答数の割合、以下同じ)を占めた「ESGインテグレーション(ESG要因を投資の分析や決定に組み込む手法)」で、投資先企業に働き掛ける「エンゲージメント(対話)」(84%)、株主総会での「議決権行使」(76%)が続いた。
  • ESGインテグレーションで組み込んでいる要因の首位は「スコープ1、2、3のGHG(温室効果ガス)排出量の内訳と総量」(65%)、重視しているエンゲージメントテーマの首位は「気候変動(TCFD=気候関連財務情報開示タスクフォース=を含む)」(91%)だった。

 

ESG投資手法

 

投資手法別で、有効回答の90%の機関が「ESGインテグレーション」を採用しており、21年調査以来、2年ぶりに首位に返り咲いた。前回の22年調査では3位だった。今回は「エンゲージメント(対話)」が84%で2位、「議決権行使」は76%で3位と、それぞれ22年調査から順位を1つ落とした。

23年調査結果をアセットマネジャーだけで集計したところ、首位が「ESGインテグレーション」(92%)、2位は「エンゲージメント」(82%)、3位は「議決権行使」(71%)だったのに対し、アセットオーナーは首位が「エンゲージメント」(90%)、2位は「ESGインテグレーション」と「議決権行使」(ともに85%)だった。この3手法が引き続き広く使われている。

「ESGインテグレーション」で組み込んでいるESG要因の首位は、企業自らが排出する直接排出(スコープ1)、自社の電気使用などに伴う間接排出(スコープ2)、事業活動に関連する他社の排出(スコープ3)といった「GHG排出量の内訳と総量」(65%)、2位は「取締役会のジェンダーの多様性」(55%)、3位は「生物多様性と生態系の保全活動」(45%)だった。有価証券報告書で2023年3月期決算から開示が始まった「男女間賃金格差」は31%と、22年調査の27%、21年の16%から上昇した。

 

エンゲージメントのテーマ

 

一方、エンゲージメントのテーマの首位は「気候変動(TCFDを含む)」(91%)、2位は「ダイバーシティ&インクルージョン」(72%)、3位は「人権」(61%)だった。伸びが目立ったのは、前回の31%(5位)から今回41%(4位)に上昇した「労働慣行(健康と安全)」だ。労働力不足が課題になる中、人的資本に関心が集まり、従業員が健康で安心して働ける環境が問われているようだ。

今回新規にエンゲージメント実施企業数の設問を加えた。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)いずれの課題でも、エンゲージメントを実施した投資家のうち最多の回答は「50社以上100社未満」になった(ガバナンス課題は「200社以上」も同率首位)。

エンゲージメント対象企業の対応を促すための工夫は「経営陣など複数レイヤーと対話する」が62%で最も多く、「アナリストを対話に同席させる」が58%で続いた。22年調査と21年調査では「セクターアナリストを対話に同席させる」がそれぞれ38%、39%であり、それに比べると大きく伸びた。

=③に続く

 

《調査の概要》

名 称:「QUICK ESG投資実態調査2023」
対 象:「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明機関もしくは責任投資原則(PRI)署名機関の中から抽出した、日本国内に拠点を置く265の機関投資家
回答数:73(うちアセットマネジャー46、アセットオーナー27)
期 間:2023年8月21日~10月10日

ESG投資実態調査2023(要約版)はこちら

 

(QUICK ESG研究所)