ESG研究所ESG投資実態調査2023①
ESG割合「90%以上」33%・5年後46%

ESG投資実態調査2023

QUICK ESG研究所は2024年1月30日、「ESG投資実態調査2023」を公表した。国内に拠点を置く投資家に23年8月21日~10月10日に調査した結果を3回に分けて紹介する。第1回はESG投資の残高や割合について取り上げる。

 

《ポイント》

  • ESG投資残高(有効回答数61)は約104兆3000億円と、前回の22年調査(同41)に比べ約22兆6000億円増えた。一方、運用資産全体に占めるESG投資の割合は57%と同2ポイント低下した。
  • 運用資産全体に占めるESG投資の割合を10%刻みで尋ねたところ、現在、「10%未満」が34%(設問ごとの有効回答数に対する各選択肢回答数の割合、以下同じ)、「90%以上」は33%で二極化している。一方、5年後の計画は「10%未満」が24%に低下し、「90%以上」は46%に上昇する。

 

日本株の運用資産残高とESC投資残高の推移

 

今回で5回目となる23年調査では、企業年金基金や共済組合など「年金基金」の調査対象を広げ、日本国内に拠点を置く265の機関投資家に依頼し、73機関から回答を得た。運用資産残高とESG投資残高は14年金基金を含む61機関が回答した。22年調査は170機関にアンケートを依頼し、61機関が回答、このうち残高の回答機関数は41だった。

運用資産残高やESG投資残高には年金基金などのアセットオーナー(資産保有者)がアセットマネジャー(資産運用会社)に運用を委託する分も含み重複もあるとみられるが、単純に合算した。日本株の運用資産残高は約183兆円と22年調査に比べ約43兆5000億円増加した。このうちESG投資残高は約104兆3000億円と同22兆6000億円増えた。

運用資産全体に占めるESG投資の割合は57%と22年調査に比べ2ポイント、21年調査比では5ポイント低下した。過去3年の調査では回答した機関の違いもあり、これをもって直ちにESG投資割合が減ったと判断できない。見せかけだけの環境対応への批判が生じる中で、これまで連続して回答した機関では「ESG投資」の定義を厳格に見直したところもあるとみられる。

 

ESG投資の現状と計画

 

ESG投資が今後、拡大するかどうか判断するうえで運用資産全体に占めるESG投資の割合を10%刻みで尋ねた設問の回答が参考になるとみられる。現在、「10%未満」の機関投資家が34%、「90%以上」は33%で二極化している。1年後の計画は「10%未満」が30%、「90%以上」は40%、5年後の計画は「10%未満」が24%、「90%以上」は46%となった。現状維持か増やす計画の機関が多い。ESG投資を重視する流れは変わっていないように見受けられる。

5年後にESG投資割合を増やす理由は「自社の経営トップによるコミットメント」が50%で最も多く、「ESGインテグレーション(ESG要因を投資分析や決定に組み込む手法)の強化」(43%)、「ESGファンドの増加」(36%)が続いた。一方、「リターンの獲得」は29%にとどまり、株価上昇などによる収益を拠り所とする考え方は主流にはなっていないようだ。

21年調査から3回目で初めて「ESG投資割合を減らす」との回答が1機関あった。現在の「40%以上50%未満」から1年後、5年後ともに「20%以上30%未満」にする計画だ。5年後に割合を引き下げる理由として「リターンの相対的な低さ」や「ESGの基準や報告基準に普遍的な合意がない」ことを挙げた。

=②に続く

 

《調査の概要》

名 称:「QUICK ESG投資実態調査2023」
対 象:「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明機関もしくは責任投資原則(PRI)署名機関の中から抽出した、日本国内に拠点を置く265の機関投資家
回答数:73(うちアセットマネジャー46、アセットオーナー27)
期 間:2023年8月21日~10月10日

ESG投資実態調査2023(要約版)はこちら

 

(QUICK ESG研究所)