ESG研究所ESGブックの9月末スコア、太平洋工業が6位に急伸 伊藤忠が首位に

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2024年9月30日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス」をランキングしたところ、太平洋工業(7250)が6位と、四半期ベースでは6月30日時点の92位から急伸した。首位は伊藤忠商事(8001)で、6月末時点の4位から順位を上げた。

 

 

「ESGパフォーマンススコア」はSASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダードの5領域(ディメンション)と、それを構成する26のカテゴリーで評価する指標(QUICK Knowledge特設サイトでは「合計スコア」と表示)。ESGブックは「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルとイノベーション」「リーダーシップとガバナンス」という「ディメンションスコア」と、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3本柱である「ピラースコア」を算出している。

スコアに「プラス」が付くのは、企業の公開情報に加え、企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)などの情報を反映していることを示す。プラス付きスコアはニュースを受けて日々変動する可能性があるなど更新頻度が高い。ESGパフォーマンススコアやディメンションスコア、ピラースコアはそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れている。

今回2位のクボタ(6326)と3位の花王(4452)は6月末とそれぞれ同じ順位だった。6月末に首位だった三井物産(8031)は4位に下がった。ランキング上位で変化率が大きかった企業の1つは太平洋工業で、スコアは75.30と6月末の63.41から大幅に上昇した。9月末時点のディメンションスコア・プラスを見ると、環境が86.76、社会資本は74.79、人的資本は69.91、ビジネスモデルとイノベーションは70.24、リーダーシップとガバナンスは65.54だった。

 

 

太平洋工業のディメンションスコア・プラスは6月末比では環境、ビジネスモデルとイノベーション、リーダーシップとガバナンスの3領域で上昇した。環境を構成するカテゴリーのスコアは「廃棄物及び危険物管理」が高水準であるうえ、「エネルギー管理」「大気の質」「生態系への影響」が大きく改善した。

太平洋工業のESG関連ニュースを調べると、7月16日にESG投資指数「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に2年連続で選定されたことを開示している。また、23年から「サステナビリティレポート(旧CSRレポート)に替えて「Creating Tomorrow Report(統合報告書)」を発行。併せて「サステナビリティデータブック」で情報発信している。

24年3月期の有価証券報告書では、23年4月に公表した中長期経営構想「Beyond the OCEAN」で掲げた「非財務価値目標」や、「PACIFIC環境チャレンジ2050に関する目標」の表を掲載。電動車向け売上比率やCO2(二酸化炭素)排出量、廃棄物排出量、水使用量などの具体的な目標と実績を開示している。こうした「環境負荷の極小化」の取り組みがESGブックに評価されているのではないかとみられる。

一方、太平洋工業の株価は9月末時点で1371円と6月末(6月28日)に比べ9.08%下落、3月末(3月29日)比では19.73%下げており、1年前(23年9月29日)比でも4.33%安だった。9月末の東証株価指数(TOPIX)は6月末比が5.83%安、3月末比は4.43%安、1年前比は13.88%高となっており、太平洋工業のパフォーマンスは見劣りする。ただ、ESG要因は中長期的な企業価値に影響を与えると考えられており、ESGのスコアが上昇した企業とその要因を探っておく意味があるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)