ESG研究所ESGブックの24年末スコア、ユニ・チャームが6位に浮上 首位は三井物産

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2024年12月31日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス(EPSP)」をランキングしたところ、ユニ・チャーム(8113)が6位と23年12月31日時点の99位から浮上した。首位は三井物産(8031)で同時点の3位から順位を上げ、四半期末ベースでは24年6月末以来、2四半期ぶりに首位に返り咲いた。

 

 

「ESGパフォーマンススコア」はSASB(サステナビリティ会計基準審議会)基準の5領域(ディメンション)と、それを構成する26のカテゴリーで評価する指標(QUICK Knowledge特設サイトでは「合計スコア」と表示)。ESGブックは環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3本柱である「ピラースコア」と、「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルとイノベーション」「リーダーシップとガバナンス」という「ディメンションスコア」を算出している。

スコアに「プラス」が付くのは、企業の公開情報に加え、企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)などの情報を反映していることを示す。プラス付きスコアはニュースを受けて日々変動する可能性があり、更新頻度が高い。ESGパフォーマンススコアやピラースコア、ディメンションスコアはそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れている。

24年12月31日と23年12月31日のEPSPをQUICK Workstationの「レポート」機能を使って抽出し、日本企業上位10社を比べたところ、三井物産のほか、3位の花王(4452、23年12月31日時点は首位)、4位の伊藤忠商事(8001、同4位)、5位のNEC(6701、同6位)の4社以外は入れ替わった。上昇が目立ったのはユニ・チャームのほか、8位の太平洋工業(7250、同134位)だった。

 

 

ユニ・チャームのEPSPは75.15と、23年12月31日時点の62.19から上昇した。内訳をみると、ピラースコア・プラスの「E」が53.43から72.29に、ディメンションスコア・プラスの「環境」は51.68から89.42に、それぞれ大幅に上昇した。環境領域のカテゴリーは「温室効果ガス(GHG)排出」のほか「大気の質」「エネルギー管理」「水と廃水管理」「廃棄物と危険物管理」「生態系への影響」で構成される。

ユニ・チャームのウェブサイトの「サステナビリティ」によると、2020年10月にグループの中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」を公表。地球環境分野では環境配慮型商品の開発、リサイクルモデルの拡大、気候変動対応、商品のリサイクル推進、プラスチック使用料の削減を「重要取り組みテーマ」として指標や中長期目標を掲げて実行中だ。

ユニ・チャームのウェブサイトの「サステナビリティニュース一覧」をみると、24年2月、企業などの環境活動を評価する英CDPから23年に「フォレスト(森林保全)」「水セキュリティ(水資源保護)」の2分野で最高評価のAリスト、「気候変動」分野ではAに次ぐA-(Aマイナス)獲得したと公表している。同年8月には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本企業を対象とする6つのESG指数すべての構成銘柄に選定されたと公表した。これに関して同社は「自然環境問題や社会課題を解決し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に取り組んだ事業活動が評価された」としている。同社はESG評価機関から総じて高評価を受けていることがうかがえる。

一方、ユニ・チャームの24年の株価騰落率(24年12月30日終値と23年12月29日終値の比較)は23.35%の下落となった。東証株価指数(TOPIX)の17.69%上昇に比べ、大きく見劣りする結果だった。また24年にESGスコアが大幅に上昇した太平洋工業の24年の株価騰落率は6.38%の上昇で、TOPIXを下回った。ESG要因は中長期的な企業価値に影響を与えると考えられているものの、短期的には株価と連動するとは限らない。

 

 

なお、ESGブックの日本企業のスコア算出対象で23年末と比較可能な954社の株価騰落率の上昇率首位はフジクラ(5803)で、24年12月30日終値は6548円と23年12月29日終値に比べ約6倍(503.78%上昇)となった。同社の24年末のEPSPは58.68と23年末の44.86から大幅に上昇した。このように株価とESGスコアがそろって上昇するケースももちろんある。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)