ESG研究所ESGブックの6月末スコア、アサヒが躍進 
三井物産、首位を維持

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2024年6月30日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス」をランキングしたところ、アサヒグループホールディングス(2502)が76.31で5位に入った。四半期末ベースで比べると、3月31日時点の66.27(63位)から躍進した。首位は3月末と同じ三井物産(8031)だった。

 

 

「ESGパフォーマンススコア」はサステナビリティ会計基準審議会(SASB)スタンダードの26カテゴリーの項目で評価する指標。ESGブックは環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3本柱である「ピラースコア」のほか、SASBの5領域である「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルとイノベーション」「リーダーシップとガバナンス」という「ディメンションスコア」も算出している。

スコアに「プラス」が付くのは、企業の公開情報に加え、企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)の情報を反映していることを示す。プラス付きスコアはニュースを受けて日々変動する可能性があるなど更新頻度が高い。ESGパフォーマンススコアのほか、ピラースコア、ディメンションスコアもそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れている。

 

 

アサヒを除くと上位の顔ぶれに大きな変化はなかった。アサヒのESGパフォーマンス・スコア・プラスを日足チャートで振り返ると5月末に大きく上昇したことがわかる。6月末時点の同社のディメンションスコア(いずれもプラス付き)を見ると、環境80.76(3月末は70.00)、社会資本71.04(同53.69)、人的資本70.85(同70.00)、ビジネスモデルとイノベーション79.97(同73.05)、リーダーシップとガバナンス60.50(55.68)だった。

3月末比では「社会資本スコア・プラス」の上昇が目立つ。SASBの社会資本は「人権と地域社会との関係」「顧客のプライバシー」「データセキュリティ」「アクセスとアフォーダビリティ」「製品の質と安全性」「顧客の福祉」「販売慣行と製品のラベリング」の7カテゴリーで構成される。

アサヒが5月31日に公開した「統合報告書2024」から社会資本に関連する情報を探すと、「責任ある飲酒」についてグローバル目標としてノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比を「2025年までに15%」から「2030年までに20%」に見直したことが記載されている。また、インパクトの可視化の取り組みの中で、ビール酵母細胞壁由来の農業資材を対象とした社会的インパクトの試算を実施した。

アサヒの株価は6月末(6月28日)時点で5675円と3月末(3月29日)に比べ1.67%上昇した。1年前(2023年6月30日)比は1.81%高だった。6月末の東証株価指数(TOPIX)は3月末比が1.48%高、1年前比は22.77%高で、アサヒのパフォーマンスが優れているとは言い難い。ただ、ESG要因は中長期的な企業価値に影響を与えるとみられており、一評価機関のスコアだとしても上昇した要因を探る意味はあるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)