ESG研究所ESGブックの人的資本スコア首位は伊藤忠
2月末、資生堂とユニチャームは多様性など高評価
2025年03月17日
JPX総研と日本経済新聞社は共同で人的資本(ヒューマンキャピタル)に着目した新しい株価指数の開発に取り組むという。国内上場企業の人的資本に関するパフォーマンス評価は現在、どうなっているのか。アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」の2025年2月28日時点の「人的資本スコア・プラス」をランキングしたところ、首位は伊藤忠商事(伊藤忠、8001)の89.89だった。
2月5日付のJPX総研と日本経済新聞社の発表によると、新指数の銘柄選定ではSASB(サステナビリティ会計基準審議会)のグローバルな評価指標をベースに日本特有の指標も織り込む予定という。ESGブックはSASB基準をベースに「ESGパフォーマンススコア」算出しているので、それを構成するディメンション(領域)とカテゴリーのスコアを調べることにした。
ESGパフォーマンススコアは5領域(ディメンション)と、それを構成する26のカテゴリーで評価して算出される。5領域の1つが「人的資本」だ。人的資本領域は「労働慣行」「従業員の健康と安全」「従業員エンゲージメント、多様性と包摂」という3カテゴリーで構成される。
ESGブックは「ESGパフォーマンススコア」だけでなく、各領域、各カテゴリーのスコアも日々算出している。すべて100点満点で高いほど優れていることを示す。スコアには「コア」と「プラス」があり、「プラス」は企業の公開情報に加え、企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)などの情報を反映している。ここではすべて「プラス」のスコアを取り上げている。
国内上場企業約980社の人的資本スコア・プラスのランキング(2月28日時点)では、首位が伊藤忠、2位は小松製作所(コマツ、6301)、3位はジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ、6674)だった。伊藤忠のほか、4位の丸紅(8002)、7位の三井物産(三井物、8031)と、総合商社が目立つ。
上位10社のうち、国際標準化機構(ISO)による人的資本に関する情報開示の指針「ISO30414」の認証を受けて人的資本の独自報告書を作成して公開しているのは三井物だ。また、過半の企業は、人的資本経営の実践と開示を目的とした「人的資本経営コンソーシアム」の会員になっている。
総合商社3社の各カテゴリーを見ると、労働慣行スコア・プラスは首位が三井物、2位は伊藤忠、3位は丸紅と、総合商社が上位3位を独占している。一方、従業員エンゲージメント、多様性と包摂スコア・プラスは三井物が56.06と50を上回ったものの、伊藤忠と丸紅は40台にとどまった。
人的資本で2位、3位のコマツ、GSユアサは従業員の健康と安全スコア・プラスでもそれぞれ2位、3位に入った。同カテゴリーの首位はセイコーエプソン(エプソン、6724)だった。
人的資本で5位の資生堂(4911)、6位のユニ・チャーム(ユニチャーム、8113)は従業員エンゲージメント、多様性と包摂スコア・プラスでそれぞれ首位、4位だった。両社は3カテゴリーすべて70を上回り、バランスよく優れている。そこで両社のサステナビリティについてウェブサイトから調べた。
資生堂は環境と社会の領域で戦略アクションと目標を掲げている。社会領域の戦略アクションの1つは「ジェンダー平等」で、あらゆる階層の女性リーダー比率(国内)50%を30年に達成するのが目標だ。取締役、エグゼクティブオフィサー、日本国内の管理職に分けて23年実績値とともに公開している。
ユニチャームは「中長期ESG目標」で、公正で透明性の高い企業経営(ユニ・チャーム プリンシプル)を掲げ、「ダイバーシティマネジメントの推進」「優れた人材の育成・能力開発」「職場の健康と労働安全システムの構築」などのテーマに取り組んでいる。管理職における女性社員比率、社内意識調査の「仕事を通じた成長実感」における肯定的回答の比率、心身の不良を原因とした休職者の削減比率を各テーマの指標として30年の目標値と過去3年度の実績値を公開している。
経済産業省によると、人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方をいう(ウェブサイトから)。人的資本に優れた銘柄が株式市場で評価されるのか、年央に登場する予定の新株価指数の値動きを見極めたい。
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)
参考
3月16日付の日経ヴェリタスでは、QUICK ESG研究所が実施した調査を基に最新動向を分析・報告する「サステナブル投資最前線」で、「人的資本の報告書」が取り上げられました。本稿はその関連記事です。