ESG研究所ESGブックのスコア、3月末首位は三井物産 
キヤノン、2月末に大幅上昇

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2024年3月31日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス」をランキングしたところ、首位は82.30の三井物産(8031)、2位は80.85のクボタ(6326)、3位は79.87のキヤノン(7751)だった。キヤノンは2月28日時点では69.19で、2月29日に大幅に上昇した。

 

 

ESGブックは「ESGパフォーマンス・スコア」をサステナビリティ会計基準審議会(SASB)の基準を参考にした26のカテゴリーの評価を合成して算出している。環境、社会、ガバナンス(企業統治)の3つ「ピラースコア」のほか、SASBの5領域の「ディメンションスコア」も提供する。5つの領域は、環境、社会資本、人的資本、ビジネスモデルとイノベーション、リーダーシップとガバナンスだ。パフォーマンス・スコアのほか、3つのピラースコア、5つのディメンションスコア、26のカテゴリースコアはそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れていることを示す。

 

 

 

「ESGパフォーマンス・スコア」が企業の開示情報をベースにしているのに対し、今回取り上げたのは、企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)の情報を反映した「ESGパフォーマンス・スコア・プラス」だ。ESG評価機関の中にはスコア更新が年1回のところもあるが、この「スコア・プラス」は更新頻度が高いのが特長だ。

三井物産の「環境ピラースコア・プラス」は93.02、「環境ディメンションスコア・プラス」は94.22と、ESGブックに極めて高く評価されている。また「社会ピラースコア・プラス」が79.08、「人的資本ディメンションスコア・プラス」は83.47と、ともに上位10社の中で最も高い。環境・社会課題に対する取り組みが優れていることがうかがえる。

キヤノンは2月末に「環境ピラースコア・プラス」や「環境ディメンションスコア・プラス」などが上昇し、その後も高水準を維持している。同社は環境情報開示システムを運営する英CDPが2月に公開した2023年の気候変動分野で最高評価(Aリスト)を受けた。Aリストは16年、20年に続き3回目で、22年は上から2番目のAマイナス、21年は上から3番目のBだった。同社は気候変動、資源循環、化学物質、生物多様性の4つの重点領域で様々な環境保全活動を推進しているという。

キヤノンの3月末(3月29日)時点の株価(終値)は4501円で、ESGパフォーマンス・スコア・プラスが大幅に上昇する直前の2月28日に比べると、3.6%高だった。また、1年前の23年3月末比では52.3%上昇した。東証株価指数(TOPIX)の3月29日終値は2768.62と、2月28日比が3.5%高、23年3月末比は38.2%高で、ともにキヤノンの上昇率が上回った。

3月29日時点の株価の23年3月末比上昇率をみると、スコア上位10社のうちTOPIXを上回ったのは、キヤノンのほか、三井物産、伊藤忠商事(8001)、NEC(6701)の4社にとどまった。株価は企業の収益力や投資指標など様々な要因が影響するため、ESG評価機関1社のスコア上昇が株価に寄与するかどうかわからない。ただ、ESG要因は中長期的な企業価値に影響を与えるとみられており、スコアが上昇したり、高スコアを維持したりする企業の取り組みを探る意味はあるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)