ESG研究所9月末GCスコア、国内首位は京セラ 
ESGブックの指標

ESG研究所

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2023年9月30日時点の「GCスコア」をランキングしたところ、日本企業の首位は京セラ(6971)、2位は富士通(6702)、3位はブラザー工業(6448)だった。四半期末ベースでみると、京セラは昨年6月末以来の首位返り咲きで、昨年9月末から今年6月末までは2位だった。

GCスコア国内上位10社

 

■国連グローバルコンパクト10原則に沿って評価

GCスコアは国連グローバルコンパクト(UNGC)の10原則に沿って企業の活動を評価する指標。ESGブックは「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4つの主要課題に関する企業の開示情報のほか、ニュースや非政府組織(NGO)などの公表した情報を組み入れて随時更新している。GCスコアのほか、4つの主要課題のサブスコアもそれぞれ100点満点で点数化している。

ESGブックのもう一つの指標である「ESGスコア」が業種ごとに株価や財務上の重要性を考慮して評価項目のウエートを調整しているのに対し、GCスコアは業種に関係なく規範的な観点から企業を評価している。このため、企業価値を毀損するようなレピュテーション(風評)リスクを判断するために用いられる。

23年9月30日時点の上位10社のうち、1年前と3社が入れ替わった。1年前にもトップ10だったのは、首位の京セラのほか、2位の富士通(1年前は5位)、3位のブラザー工業(同4位)、4位の花王(4452、同首位)、5位のコニカミノルタ(4902、同6位)、8位の積水化学工業(4204、同3位)、10位のオムロン(6645、同9位)の7社だ。

 

■SUBARU、1年前は140位で今年前半に大幅上昇

SUBARU(7270)は今回67.58点で9位になった。四半期末ベースでは、昨年9月末は61.95点、12月末は61.86点で、ともに140位だった。今年3月末に66.11点で31位に順位を上げ、6月末には68.10点に上昇し、一気に9位に入った。今回はスコアをやや下げたものの、順位を維持した。今年9月末時点の4つサブスコアはそろって1年前に比べて上昇している。「環境」が1年前の69.47点から79.38点に上がったのが目立つ。

SUBARUの直近の有価証券報告書によると、同社グループは中期経営ビジョンに合わせ、CSR重点6領域(「人を中心とした自動車文化」「共感・共生」「安心」「ダイバーシティ」「環境」「コンプライアンス」)を定め、「2025年のありたい姿」を明確にし、KPI(重要業績評価指標)と目標を設けて取り組んでいる。環境では「2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(EV)+ハイブリッド車(HV)に」などを掲げている。

またSUBARUは今年4月、米経済誌フォーブスが発表した「ソーシャルインパクトをもたらす米国のベストブランド」(America’s Best Brands For Social Impact)ランキングで自動車ブランド1位、上位300ブランド中2位に選出された。同調査は「ブランド信条およびブランドへの信頼」「社会に対する姿勢」「サステナビリティ」「地域社会への支援」の4カテゴリーで評価される。

環境や社会の課題への取り組みでのポジティブな評価が短期的な企業価値に結び付くとは限らないものの、SUBARUの9月29日時点の株価は2906.0円と昨年9月末時点に比べ34.1%上昇し、東証株価指数(TOPIX)の26.6%を上回った。ESGブックのGCスコアは一評価機関の判断にすぎないが、各種情報を取り込んで随時更新されており、スコアの変化とその背景を探る意味はあるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)