ESG研究所6月末ESGスコア、丸紅がトップ10入り 首位は三井物産が維持

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アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2025年6月30日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス(EPSP)」をランキングしたところ、丸紅(8002)が8位と、トップ10に入った。四半期末ベースでは3カ月前の51位、1年前の119位から大幅に順位を上げた。首位は三井物産(8031)で3カ月前、1年前と同じだった。

 

 

ESGパフォーマンススコアは「SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダード(基準)」の5つのディメンション(領域)・26のカテゴリーで評価する指標(QUICK Knowledge 特設サイトでは「合計スコア」と表示)。ESGブックは環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3本柱である「ピラースコア」と、「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルとイノベーション」「リーダーシップとガバナンス」という「ディメンションスコア」を算出している。

「コア」のスコアが企業の開示情報に基づいたものであるのに対し、「プラス」のスコアは、企業の開示情報に加え、メディアのニュースやNGO(非政府組織)などの情報を反映しており、更新頻度が高い。各スコアはそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れていることを示す。

日本企業のEPSPの上位10社を1年前と比べたところ、首位の三井物産、3位のクボタ(6326、24年6月末2位)、5位の花王(4452、同3位)、6位の伊藤忠商事(8001、同4位)、7位の大和ハウス工業(1925、同10位)、10位のアサヒグループホールディングス(2502、同5位)の6社以外が入れ替わった。一方、3カ月前の25年3月末と比べると入れ替わったのは丸紅だけだった。

 

 

丸紅の25年6月末のEPSPは74.90と、1年前に比べ12.89ポイント上昇した。ディメンションスコア・プラスは5領域すべて上がった。「ビジネスモデルとイノベーション」は22.84ポイント高い74.19、「社会資本」は16.44高い68.97、「人的資本」は16.03高い86.02で、このうち「人的資本」は日本企業全体で4位と高い水準にある。

丸紅のサステナビリティサイトでこの1年の動きをみると、6月30日に「 社会データを更新」、5月30日に「人財マネジメント、ダイバーシティ・マネジメント、健康経営を更新」、3月31日に「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示を公開」、3月27日に「マテリアリティを更新」、1月17日に「気候変動対策への貢献(TCFD=気候関連財務情報開示タスクフォース=提言に基づく情報開示)を更新」、24年9月13日に「統合報告書2024を掲載」、24年8月30日に「環境データ、水マネジメントを更新」などが掲載されている。こうした更新情報が評価向上につながったとみられる。

また、丸紅は「ESG対照表」を載せ、「環境マネジメント」から「ダイバーシティ・マネジメント」までE、S分野合計13項目の方針や取り組みなどを整理している。高いスコアを記録した人的資本に関連する「人権の尊重」「労働安全衛生」はデータもそろえている。さらに、統合報告書とは別に「サステナブル・デベロップメント・レポート」を19年、22年、24年に作成し、サステナビリティへの取り組みの進化を報告している。

一方、丸紅の1年間の株価騰落率(25年6月30日と24年6月28日を比較)をみると、2.10%下落した。この間、ベンチマークとされる東証株価指数(TOPIX)は1.54%上昇している。この1年だけでみると、ESGブックの評価と株価は連動しているとは言い難い。ただ、ESGへの取り組みは中長期的な企業価値の向上に寄与すると考えられている。ESGブックはESG評価機関の1つに過ぎないが、評価の上がった企業の取り組みを調べる意味はあるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)