ESG研究所女性役員比率30%以上は100社中17社 4月末、TOPIX100企業で登用進む
2025年05月14日
日本の大企業で女性役員の登用がじわじわ進んでいる。東京証券取引所の大型株指数「TOPIX100」の構成企業を調べたところ、女性役員比率30%以上の企業は5年前の1社から17社に増えた。100社の女性役員数の合計は345人で、6年前に比べ倍増し、男性を含む役員数全体の2割を超えた。
QUICK Workstation(Astra Manager)のレポート機能を使い、日本経済新聞社のデータからTOPIX100構成企業各社の男性役員数と女性役員数を2019年から25年まで毎年4月30日時点でダウンロードして集計・比較した。女性役員比率30%以上の企業は19年と20年は資生堂(4911)だけだったが、25年には17社になった。また、女性役員不登用(0%)の企業は23年4月末時点でなくなっている。
女性役員数合計を構成企業数で割って算出した1社当たりの女性役員数は19年の1.7人弱から24年には3.5人近くに倍増した。この間、全役員数(男性役員数と女性役員数の合計)を構成社数で割って算出した「1社当たりの役員数」は約17人で、ほぼ横ばいで推移した。女性役員数を増やすために役員枠を増やすといった対応は取っていないことがうかがえる。
取締役会など企業の重要な意思決定機関に占める女性の割合を30%に引き上げることを目指して経営トップが集う「30%クラブ」という世界的な組織活動がある。国内組織「30%クラブ・ジャパン」は30年をめどにTOPIX100の取締役会に占める女性割合を30%にするという目標を掲げている。国内組織は19年5月に正式に活動を開始しており、その直前の同年4月30日を起点にすると、この6年間で着実に成果を上げてきたように見える。
政府や東京証券取引所の後押しも見逃せない。政府は23年6月の「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)」で東証プライム市場の上場企業(以下、プライム企業)に対する女性役員の数値目標を設定した。東証は23年10月、プライム企業に、25年を目途に女性役員を1人以上選任することや、30年までに女性役員比率30%以上を目指すことなどを求めた。政府は23年12月、25年までにプライム企業の「女性役員の割合19%」「女性役員が不登用の割合0%」という中間目標を設定した。
政府や東証が目標を定めるプライム企業のデータを見てみよう。TOPIX100構成企業に比べると女性役員登用の進捗が遅いようだが、市場区分変更でプライム市場が始まった22年4月を起点にすると、女性役員不登用(0%)の企業数は全体の18.7%から25年4月末には3.7%と、大幅に減ってきた。女性役員比率30%以上の企業も着実に増えてきていると言ってよいだろう。
TOPIX100構成企業と同じように、1社当たりの役員数を算出すると、12人弱であり、22年からほぼ横ばいで推移している。一方、1社当たりの女性役員数は22年の約1.3人から25年には約2人にまで増えてきた。役員を増枠しない中で、女性役員が徐々に増えてきており、この点も評価できる。
30%クラブ・ジャパンの目標は「取締役会に占める女性の割合」で、監査役会設置会社は監査役を含む。一方、政府の「女性役員」には、取締役、監査役、執行役に加え、各企業が女性役員登用目標の前提とした執行役員やそれに準じる役職者も含めている。ここで取り上げた日本経済新聞社のデータの「女性役員」とでは定義が異なる可能性があるが、全体の傾向としてはTOPIX100構成企業を中心に女性役員が着実に増えている。
ただ、注意すべきなのは、ここでのデータの集計値は「延べ人数」であり、1人で複数の企業の社外取締役や監査役を掛け持ちしている人が相当数にのぼるとみられることだ。25年3月に定時株主総会を開催した12月期決算のTOPIX100構成企業を調べたところ、他のプライム企業3社(うち2社はTOPIX100構成企業)の社外取締役を務める女性が再任された例があった。1人で4社の社外取締役をこなしており、生え抜きの女性の役員登用が進んでいるとは言い難い。社内での育成が課題になりそうだ。
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)