ESG研究所公的年金7基金がPRI署名 岸田首相の公約実現
2024年08月01日
公的年金7基金が今年3月から7月に国連責任投資原則(PRI)に署名した。昨年10月に東京で開催されたPRIの年次カンファレンス「PRI in Person 2023」の基調講演で岸田文雄首相が「代表的な公的年金基金7基金、90兆円規模が新たにPRIの署名に向けた作業を進める」と表明した公約が実現した。
3月の国家公務員共済組合連合会を皮切りに、5月に地方公務員共済組合連合会、国民年金基金連合会、6月に警察共済組合、全国市町村職員共済組合連合会、7月初めに公立学校共済組合が相次いで署名。最後に日本私立学校振興・共済事業団が7月30日付で署名したことがPRIのウェブサイトで公表された。
PRIは2006年、ESG投資を促す目的で、当時の国連事務総長だったコフィー・アナン氏が提唱して始まった。「投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込む」など6原則で構成される。PRIへの署名は、ESG投資を重視する姿勢を宣言することになる。PRIのウェブサイトによると、7月28日時点の署名機関は5296で、このうち日本は138を占める。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は昨年10月に急落し、その後も低迷が続くが、PRI年次カンファレンスでの岸田首相に対する内外関係者の評価は高かった。「公的年金基金がサステナブルファイナンスへの取り組みを強化し、その流れを市場全体に波及することを目指していく」と強調し、会場で満座の拍手を浴びた。
公的年金で最大の資産規模を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名し、国内でESG投資を加速させるきっかけになった。年金などのアセットオーナー(資産保有者)がESG投資に賛同すれば、その委託を受けたアセットマネジャー(運用会社)の取り組みにつながるのは間違いない。
これまで企業年金基金によるPRI署名はセコム、エーザイ、肥後銀行、山陰合同銀行の4基金にとどまる。公的年金基金が呼び水になり、企業年金によるESG投資が進むかどうかが次の焦点になりそうだ。
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)