ESG研究所ソニーG、「GCスコア」国内首位 6月末、ESGブックの指標

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アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2023年6月30日時点のGCスコアをランキングしたところ、日本企業の首位はソニーグループ(6758)だった。2位は京セラ(6971)、3位は富士通(6702)。ソニーGは1年前の150位から躍進した。

 

■GCスコアは風評リスクの判断指標

GCスコアは国連グローバル・コンパクト(UNGC)の10原則に沿って企業の活動を評価する指標。ESGブックは「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4つの主要課題に関する企業の開示情報のほかニュースや非政府組織(NGO)などの公表した情報を組み入れて随時更新している。GCスコアのほか、4つの主要課題のサブスコアもそれぞれ100点満点で点数化している。

ESGブックのもう一つの指標である「ESGスコア」が業種ごとに株価や財務上の重要性を考慮して評価項目のウエートを調整しているのに対し、GCスコアは業種に関係なく規範的な観点から企業を評価している。このため、企業価値を毀損するようなレピュテーション(風評)リスクを判断するために用いられる。

2023年6月30日時点の海外企業も含めた世界ランキングで、日本企業はソニーGの36位が最高だった。日本企業566社の分布状況を10点刻みで見ると、60点以上70点未満が206社と最も多く、50点以上60点未満が190社で続いた。平均は54.53点だった。

GCスコア国内上位企業6月末ランキング

23年6月30日時点の上位10社のうち、1年前と4社が入れ替わった。1年前にもトップ10だったのは、今回2位の京セラ(1年前は首位)、3位の富士通(同3位)、4位の花王(4452、同6位)、5位の積水化学工業(4204、同2位)、6位のブラザー工業(6448、同4位)、7位のコニカミノルタ(4902、同5位)。

 

■ソニーG、1年前の150位から躍進

四半期末ベースで変遷をたどると、昨年9月末に花王が京セラから入れ替わって首位に立ち、今年3月末時点まで首位を保っていた。6月末はソニーGが70.99点と得点を伸ばし、首位に立った。ソニーGのGCスコアを構成する4つサブスコアはそろって1年前に比べ上昇した。中でも「人権」が57.25点から71.82点に、「労働」は57.74点から70.92点に大幅に上昇したのが目立つ。

ソニーグループのGCスコア

ソニーGの23年3月期(22年度)の有価証券報告によると、22年度に実施したマテリアリティ(重要課題)分析の結果、気候変動、DE&I(多様性・公平性と包摂)、人権の尊重、サステナビリティに貢献する技術を最重要項目として特定した。このうち人権については責任あるサプライチェーン、多様性の尊重、責任あるテクノロジーの開発及び使用を重点領域と定め、個別の取り組みを推進している。

人材の多様性では「国内のソニーG各社における入社者全体に占める他社経験者の割合は22年度に52.5%」「22年度末時点では主要事業の責任者である上席事業役員の半数が外国籍の役員」「22年度末時点のソニーG全社員のうちの女性社員比率は34.0%、管理職に占める女性労働者の割合は30.0%」など数値も挙げている。また社員エンゲージメントについては上級役員の業績連動報酬の評価指標の一部に組み入れている。一連の取り組みがGCスコアの向上につながっているとみられる。

人権などのS(社会)課題への取り組みでネガティブな評判が広がれば、信用の低下やブランドの毀損を招きかねない。ESGブックのGCスコアは一評価機関の判断にすぎないが、各種情報を取り込んで随時更新されるという特徴がある。スコアの変化とその背景を追いかける意味があるだろう。

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)