ESG研究所【ESGブックのスコア】3月末はコーセー首位、サンドラッグがトップ10入り
2023年04月03日
アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2023年3月31日時点の日本企業のESGスコアをランキングしたところ、首位は71.43点のコーセー(4922)で、四半期末ベースでは昨年末の首位を守った。2位は石油資源開発(石油資源、1662)、3位は塩野義製薬(塩野義、4507)で、昨年末から順位を1つずつ上げた。サンドラッグ(9989)が7位とトップ10に入った。
上位10社は1年前と6社が入れ替わる
1年前と比べると、上位10社のうち、6社が入れ替わった。1年前にもトップ10だったのは、コーセー(1年前は9位)、塩野義(同4位)のほか、5位のポーラ・オルビスホールディングス(ポーラオルHD、4927、同3位)、8位のオムロン(6645、同5位)だ。
2023年3月31日時点の海外企業も含めた世界ランキングでは、コーセーの27位が最高だった。日本企業572社の分布状況を10点刻みで見ると、50点以上60点未満が257社と最も多く、平均は52.29点だった。
ESGブックは企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを収集し、独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアは100点満点で、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えている。
サンドラッグ、環境サブスコア向上、株価は大幅高
ESGスコア国内上位10社のこの1年間の株価騰落率をみると、石油資源が73.7%高と首位で、サンドラッグの22.2%高が次ぐ。コーセーも21.6%高と上昇が目立った。この1年でESGスコアが上昇して9位と10位に入った伊藤忠テクノソリューションズ(CTC、4739)と日本オラクル(4716)も、株価上昇率が東証株価指数(TOPIX)の2.9%を上回った。
サンドラッグの2023年3月31日のESGスコアは68.13点と、1年前から0.75点上昇した。サブスコアを1年前と比べると、社会こそ67.93点から65.84点に低下したものの、環境が55.31点から60.38点に、ガバナンスは70.98点から72.52点に上昇した。環境サブスコアの向上が目立つ。
サンドラッグの「統合報告書2022」によると、同社は重要課題(マテリアリティ)の1つに「環境経営の推進」を掲げ、エネルギー効率の改善や廃棄物の削減、環境に配慮したPB(プライベートブランド)商品の拡充などに取り組んでいる。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿って開示し、「指標と目標」では「床面積あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を2013年度比30%削減する」などの「2030年の目標」を掲げ、直近6期分のCO2排出量とともにデータを掲載している。
株価は企業の収益力や投資指標、材料になるニュースなど様々な要因が影響するため、一評価機関のESGスコアの上昇につれて株高が進むとは限らない。今回ESGスコアの上昇と株高が重なる企業が目立ったのは偶然かもしれない。ただ、ESG要因は中長期的な企業価値に影響を与えるとみられている。スコア上昇の背景を調べる意味はあるだろう。
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)