ESG研究所【ESGブック】大学生による企業サステナビリティ分析とポートフォリオ構築

【ESGブック】大学生による企業サステナビリティ分析とポートフォリオ構築

今年も昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科において、グローバルビジネス学部長である今井章子教授の講義にゲストとして参加し、企業のサステナビリティに関する授業を担当した。大学生による企業サステナビリティ分析とポートフォリオ構築について紹介したい。

2回にわたる授業のうち、第1回では企業のサステナビリティ評価について解説し、第2回ではグループワークによるプレゼンテーションを実施した。講義には大学3年生および4年生の約40名が参加し、各グループ5〜6名で構成された6グループによる発表となった。

各グループには課題として以下の5項目を踏まえたプレゼンテーションを提示した。第1回と第2回の授業の間には2週間の準備期間があり、この期間中に各グループで作業を進めることとなった。

 

  • 各グループにおいて、将来的にサステナビリティを意識しながら企業業績を向上させる可能性のある企業を10社(日本企業・外国企業いずれも可)選定する
  • 10社の選定理由について、ESGブックのプラットフォームの各社ダッシュボードを用いて説明する
     例として以下のような指標が挙げられる:
    • ESG パフォーマンススコア(EPS)が相対的に高い
    • EPSの人的資本スコアが70以上である
    • リスクスコアの「プリンシプルスコア(原則スコア)」10個がすべて50を上回っている
  • 10社それぞれのEPSの一覧を作成する
  • 10社の過去1年間の株価終値および直近の株価を一覧にする
  • 本グループワークにおいて、サステナビリティを意識しながら業績向上が期待される10社によるサステナブルなポートフォリオを作成し、そのポートフォリオを他者に推奨する際のアピールポイントを少なくとも5つ提示する

 

ここでは6グループによるポートフォリオの概要について紹介する。まず、各グループが構成したポートフォリオの10社を表に示す。各グループはテーマを設定した上で企業を選定しており、そのテーマはグループ番号の下に記載している。

 

 

各グループはそれぞれのテーマに基づき、日本企業を中心に世界の主要企業のサステナビリティに関する情報を調査・分析した。受講者は就職活動の時期にあたるため、企業に対する関心が高く、調査活動にも積極的に取り組んでいた。そのため、ポートフォリオのテーマ設定は明確であり、組入企業の選定理由も説得力のある内容となっていた。このような状況もあり、各グループのポートフォリオにおける「EPSコア」のスコア平均値はいずれも60を上回る水準となったと考えられる。

EPSコアは企業の開示情報で評価するスコアで、グループワーク期間中にESGブックのプラットフォームを活用して調査されたものである。いずれも2025年6月10日から24日の間に取得されたスコアであるが、スコアの日付はグループごとに異なっている。

表中に示す企業は、いずれもEPSコアのスコアが高い企業である。各社のSASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダードのカテゴリー・スコアなども確認しながら、強みや弱みについても分析した。また、各ポートフォリオに含まれる企業の過去1年間の株価推移も調査し、株価変化率の単純平均を算出した結果、すべてのポートフォリオにおいて平均株価変化率はプラスとなった。

今回の分析は、サステナビリティの取り組みと株価との関係性を示すほど詳細なものではないが、サステナビリティに積極的に取り組む企業を調査し、それらの企業によるポートフォリオの株価パフォーマンスを確認したことは、企業のサステナビリティと企業価値を同時に考察する良い機会となったといえる。来年度も、学生が関心を持つ企業のサステナビリティを調査・分析する授業を企画したいと考えている。

 

ESGブック(アラベスクS-Ray 社)日本支店代表 雨宮寛