ESG研究所【ESGブック】大学生が考えるサステナブルな企業
2023年07月31日
ここ数年、昭和女子大学の今井章子教授からESGブックを活用した講義の機会を頂いている。今井教授が学部長を務めるグローバルビジネス学部のビジネスデザイン学科の「ビジネス開発研究E」という講義で、約60名の学生が履修している。
講義は3回で、初回に筆者がESGブックのデモンストレーションを行い、学生達にESGブックの使い方に慣れてもらった。そして、最終回に学生達に発表してもらう課題を説明した。履修者全員が各自で課題に取り組み、発表するのは時間的に難しいため、今回は6人ごとにグループ分けし、課題は以下の2つから選んで10グループで発表してもらうことにした。
各課題に記載されているように、各グループはいずれかの課題において日本企業1社と外国企業1社を選ぶことにした。10のグループが調査の対象とした企業は以下の通り。筆者から要請したのではないが、それぞれの課題に5グループずつが取り組むことになった。
各課題に選ばれた企業は、学生達のイメージ先行、あるいはネット等での調査で情報の得やすかったところが多かったように思う。グリーンウォッシングの伊藤忠商事と三井不動産は神宮外苑再開発に関わる事業者として、東京都から都民の共感と参画を推進する役割も委託されたことで、同再開発で問題となっている樹木伐採を強行するイメージを与えてしまったようだ。
多くの学生は小学生の頃からSDGsの取り組みを学んでいたようで、プラスチック問題、気候変動や温室効果ガスの排出量等が調査のテーマとしてすぐに上がった。ウイグル自治区の人権問題を取り上げたグループもいて、良い発表だった。残念ながらグリーンウォッシングではないため、本課題の評価としては少し減点としたが、調査内容のクオリティは高かった。
一方、女性の活躍する企業の顔ぶれはどうであろう。米化粧品会社Estee Lauderと資生堂を選んだグループが2つあった。各グループで共通していたことは、各社の女性の従業員や管理職の割合、育児休業制度などの項目を調査し、実際の職場における女性のプレゼンスや産休・育休の取りやすさなどを日本企業と外国企業で比較していたことだ。
学生達は自らが働くことを想定して、企業に対して気にする点を調査項目にしたようである。対象となった日本企業はそもそも女性の活躍しているイメージが強い企業ということもあると思うが、外国企業との比較においても各項目で伍していた。
変わった切り口で選ばれていたのがローソンである。ローソンを選んだグループによると、同社はコンビニエンスストアの中でも女性向けの商品を数多く開発・販売しているというイメージがあるようだ。
今回は2つの課題について、学生達がそれらの課題からイメージする企業を選んで、調査してもらった。実際に各社のサステナビリティの状況を調査してみると、調査前のイメージと公表されている内容との間で多くの相違点を発見したのではないかと思う。今後もこのような機会を活かしながら、企業のサステナビリティの取り組みを伝えていきたい。
(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)