ESG研究所【CO2反映指標(1)】炭素調整後の予想PER①

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企業の評価にESG要素を取り込む動きが広がっている。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス(GHG)排出量や各社がCO2を独自に値付けした「インターナル・カーボン・プライス(内部炭素価格)」と、株価や財務データを組み合わせた指標がある。QUICKリサーチ本部ESG研究所は、国内の上場会社の「炭素調整後の予想PER」「予想炭素排出原単位」「予想炭素利益率」を算出し、ランキングを作成した。

内部炭素価格と排出量を掛ければ、その会社の炭素排出にかかる「費用」を算出できる。純利益からその費用を引いた「炭素調整後の純利益」を「自己株式を除く普通株式数」で割って「1株当たりの炭素調整後の純利益」を出し、株価をこの値で割って「炭素調整後の予想PER(株価収益率)」を算出した。

フランス食品大手のダノンは2019年通期決算でGHG排出費用を1トン当たり35ユーロで計算し、それを差し引いた「炭素調整後のEPS(1株当たり利益)」を初めて開示した。この手法を応用した。

GHG排出という、会社が環境に与える負の影響を金額に換算し、それを財務上の利益から差し引き、株価と比べたらどうなるか。つまり、炭素調整後の純利益からみて株価の水準が割高か割安かを判断しようという試みだ。計算式を整理すると以下のようになる。

炭素調整後の予想PER(株価収益利率)=株価÷1株当たりの炭素調整後の予想純利益(注)

(注)1株当たりの炭素調整後の予想純利益=(予想純利益-内部炭素価格×炭素排出量)÷自己株式を除く普通株式数

内部炭素価格と炭素排出量は、各社が環境情報開示を促す英非営利団体CDPに提出した「Climate Change(気候変動) 2021」に記載した値を使用した。ランキングの調査対象はCDPの調査に回答した400社で、金融・保険業、投資法人を除いた。「決算期が3月期でCO2排出量は暦年(1~12月)」という会社もあるが、そのまま使った。

排出量については第三者の検証・保証が一部でもある会社を対象にした。「スコープ2」には地域共通の計数で算定する「ロケーション基準」と実際の購入に基づく「マーケット基準」があるが、マーケット基準を基本とした。「炭素排出原単位」「炭素利益率」も同様に算出した。

予想純利益は会社が決算短信などで開示した最新の今期予想を使用した。例えば、3月期決算の会社では、2023年3月期の純利益予想と21年3月期の内部炭素価格や排出量と組み合わせた形になる。株価は8月31日の東京証券取引所の終値を使用した。

【CO2反映指標(2)】炭素調整後の予想PER②に続く

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