ESG研究所【ESG投資実態調査2022】(3)ウクライナ情勢で「方針変更」は少数派
2023年01月19日
QUICKエンタープライズサービス開発本部ESG研究所は19日、「ESG投資実態調査2022」を公表した。集計結果の3回目は特別質問として尋ねたウクライナ情勢によるESG投資方針への影響と5年後のESG投資計画について取り上げる。
《ポイント》
・ウクライナ情勢によってESG投資の「方針を変えていない」との回答が77%を占めた。変更したとの回答の中では「ロシアやウクライナに依存している企業への投資を厳格にした」(18%)が最も多かった。
・日本株を対象にした運用資産残高全体に占めるESG投資の割合を5年後に減らすとの回答はゼロで、「現状維持」(70%)か「増やす」(30%)だった。
「ウクライナ情勢によってESG投資の方針を変えていない」との回答が8割近かったのは、非人道兵器を扱う企業の監視体制をもともと整えていたり、気候変動問題での国際協調や脱炭素への移行は不変と見ていたりするためだ。ウクライナ情勢はカントリーリスクが企業に与える影響を再認識させ、一部では投資先企業を見直したところもあったもようだが、全体で見ると方針変更は少数派だった。
調査結果をみると、倫理的でない特定の事業から収益を得ている企業などを除外する「ネガティブ・スクリーニング」や「国際規範に基づくスクリーニング」がすでに行われ、機能していると言えそうだ。
日本株を対象にした運用資産残高全体に占めるESG投資の割合を5年後にどの程度にするかという質問に対し、有効回答46のうち14が「5年後に増やす」と回答した。残りの32は「現状維持」だが、「現状維持」と回答したうちの21(66%)は現在のESG投資割合が90%以上であり、上限に近づいているためとみられる。
ロシアのウクライナ侵攻の影響でエネルギー関連の株価が上昇するなど、ESG投資家は難しい判断を迫られている。しかし、気候変動だけなく、安全保障の観点からもクリーンで持続可能なエネルギー源に移行する資金を供給すべきという見方がある。今回の調査結果から見る限り、気候変動をはじめとするESG課題に配慮する投資の中長期的な拡大傾向は変わらないようだ。
=おわり
《調査の概要》
名称:「QUICK ESG投資実態調査2022」
対象:「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明機関もしくは責任投資原則(PRI)署名機関の中から抽出した、日本国内に拠点を置く170の機関投資家
回答組織数:61(うちアセットオーナー13、アセットマネジャー48)
期間:2022年8月22日~10月4日
ESG投資実態調査2022(要約版)はこちら
(QUICKエンタープライズサービス開発本部ESG研究所)