ESG研究所【ESG投資実態調査2022】(1)投資手法は「エンゲージメント」が首位
2023年01月19日
QUICKエンタープライズサービス開発本部ESG研究所は19日、「ESG投資実態調査2022」を公表した。調査は4回目。日本に拠点を置く投資家による日本株のESG(環境・社会・企業統治)投資の実態を明らかにするのを目的に2022年8月22日~10月4日に実施した。回答組織数は61(うちアセットオーナー13、アセットマネジャー48)。集計結果を3回に分けて紹介する。第1回はESG投資の手法と推進体制。
《ポイント》
・ESG投資の手法別で最も多かったのは「エンゲージメント」(有効回答数の87%。以下、設問ごとの有効回答数に対する割合)で、「議決権行使」(85%)、「ESGインテグレーション」(81%)が続いた。
・機関投資家はエンゲージメント活動と併せて、ESGリサーチなど責任投資の推進体制を充実させている。「専門部門・部署があり、専門人材を配置している」との回答が59%にのぼった。
投資手法別で最多だったのは、投資先企業と直接対話する「エンゲージメント」で、2位は株主総会での「議決権行使」、3位はESG要因を投資分析や投資決定に組み込む「ESGインテグレーション」だった。2021年は「ESGインテグレーション」が首位で「エンゲージメント」、「議決権行使」の順番だった。この3手法が引き続き広く使われているが、その中でも今回は企業の行動に投資家として影響を与える「エンゲージメント」と「議決権行使」が目立った。
「エンゲージメント」は投資先企業に対してESGに対する行動を促そうと直接、働きかける投資手法だ。ESG要素を運用プロセスに組み込んで投資判断したり、倫理的でない特定の事業から収益を得ている企業を除外したり、といった投資家の組織内での行動にとどまらない、投資家の積極性が見て取れる。
責任投資やESGリサーチ、エンゲージメントなどの専門部門・部署について尋ねたところ、「専門部門・部署があり、専門人材を配置している」との回答が約6割を占めた。専門の人材または兼任人材を配置している会社を合わせると合計は50で有効回答の8割を超えた。
ESG課題は気候変動だけでなく、人材の多様性を含む育成と確保や人権など多岐にわたる。調査・分析だけでなく、エンゲージメント活動を進めるうえで専門の部署や人材をそろえる必要性が高まっている。今回の調査では「専門人材」と「兼任の人材」を分けて尋ねたが、ESG投資を支える組織や人材が総じて整ってきていると言えそうだ。
=(2)に続く
《調査の概要》
名称:「QUICK ESG投資実態調査2022」
対象:「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明機関もしくは責任投資原則(PRI)署名機関の中から抽出した、日本国内に拠点を置く170の機関投資家
回答組織数:61(うちアセットオーナー13、アセットマネジャー48)
期間:2022年8月22日~10月4日
ESG投資実態調査2022(要約版)はこちら
(QUICKエンタープライズサービス開発本部ESG研究所)