ESG研究所【ESGブックのスコア】22年末の首位はコーセー、石油資源が3位に 浮上
2023年01月11日
アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2022年12月31日時点の日本企業のESGスコアをランキングしたところ、首位は71.04点のコーセー(4922)だった。1年前の22位から順位を上げた。2位はポーラ・オルビスホールディングス(ポーラオルHD、4927)、3位は石油資源開発(石油資源、1662)で、ポーラオルHDは1年前の3位から順位を上げ、石油資源は97位から急浮上した。
上位10社は1年前と4社が入れ替わる
1年前と比べると、上位10社のうち、4社が入れ替わった。1年前にもトップ10だったのは、ポーラオルHDのほか、4位の塩野義製薬(4507)、6位のアインホールディングス(9627)、7位のヤマハ(7951)、8位のユニ・チャーム(8113)、10位のオムロン(6645)の6社だ。
海外企業も含めた世界ランキングでは、コーセーの30位が最高だった。日本企業566社の分布状況を10点刻みで見ると、50点以上60点未満が253社と最も多く、平均は52.35点だった。
ESGブックは企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを収集し、独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアは100点満点で、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えている。
コーセー、「サステナビリティ プラン」で6テーマに取り組む
コーセーの2022年12月31日のESGスコアは1年前の65.95点から5.09点上昇した。サブスコアを1年前と比べると、社会こそ67.21点から66.53点に小幅に低下したものの、環境が65.36点から66.76点に、企業統治は65.66点から76.58点に大幅に上昇し、全体のスコアを押し上げた。
コーセーのホームページ「サステナビリティ」によると、同社は2020年4月、30年への目標を掲げた「コーセー サステナビリティ プラン」を策定した。21の重要課題(マテリアリティ)を特定し、(一人ひとりの顧客に適応可能な)アダプタブルな商品・サービスの提供、美しく健康的で幸せな生活のサポート、ジェンダーにとらわれず活躍できる社会への貢献、ビューティを通じた環境課題への貢献、事業地域の環境保全、事業活動全体での環境負荷低減の6テーマに取り組んでいる。
また、「コーセーレポート 2022 (統合報告書)」によると、ガバナンス体制は監査役会設置会社制度を採用。2021年12月時点で取締役10人のうち3人は社外取締役でいずれも女性が務めている。
石油資源、カーボンニュートラル対応方針進める
石油資源の2022年12月31日のESGスコアは69.97点と、1年前の60.78点から9.19点上昇した。サブスコアを1年前と比べると、環境が72.73点から76.30点に、社会は61.85点から65.55点に、企業統治は53.59点から69.10点に、そろって上昇した。
石油資源のホームページによると、同社は2021年5月、「JAPEX2050~カーボンニュートラル社会の実現に向けて~」というカーボンニュートラル対応方針を策定し、温室効果ガス(GHG)排出削減に加え、二酸化炭素(CO2)回収・貯留やCO2回収・有効活用・貯留の早期事業化を掲げた。22年3月に策定した「JAPEX経営計画2022-2030」では、この対応方針を踏まえて30年までの経営目標とその達成のための重点項目を設定し、取り組んでいる。
コーセーも石油資源も過去1年の株価は大幅高
この1年でESGスコアが上昇し、国内ランキングで1位と3位になったコーセーと石油資源の株価騰落率は1年前に比べそれぞれ10.5%高、53.4%高と、そろって大幅に上昇した。一方、ESGスコアが1年前の63.34点から69.53点に上昇し、順位を53位から5位に上げた積水化学工業(4204)の騰落率は4.0%安だった。この間に日経平均株価は9.4%安、東証株価指数(TOPIX)は5.1%安で、ベンチマークは上回った。
ESGブックは様々なESG評価の1つに過ぎないうえ、株価は為替や金利、商品相場などのほか企業の収益力や投資指標、材料になるニュースなど様々な要因が影響する。このため、ESGスコアの上昇につれて株高が進むとは限らない。ただ、ESG要因が、中長期的な企業価値に影響を与えるとみられており、ESGスコアが上昇した企業の取り組みを探り、株価動向をウオッチする意義があるだろう。
(QUICKエンタープライズサービス開発本部プリンシパル ESG研究所エディター 遠藤大義)