ESG研究所【ESGブックのスコア】9月末はヤマハが国内首位に

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック(旧アラベスクS-Ray)」による2022年9月30日時点の日本企業のESGスコアをランキングしたところ、首位は71.48点のヤマハ(7951)だった。四半期末ベースでは3カ月前の4位、1年前の14位から順位を上げた。

 

上位10社は1年前と半分入れ替わる

9月30日時点の2位はポーラ・オルビスホールディングス(4927)で3カ月前の3位から順位を1つ上げた。3位は3カ月前に首位のナブテスコ(6268)だった。今回の上位10社を1年前と比べると、半分が入れ替わった。1年前もトップ10だったのはこの2社のほか、今回4位の塩野義製薬(4507)、6位のユニ・チャーム(8113)、10位の花王(4452)の5社だった。

9月30日時点で上位4社が70点台をマークした。6月30日時点に比べ、70点台は1社減った。海外企業も含めた世界ランキングでは、ヤマハの37位が最高にとどまった。日本企業566社の分布状況を10点刻みで見ると、50点以上60点未満が259社と最も多く、平均は52.66点だった。

ESGブックは企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを収集し、独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアは100点満点で、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えているのが特徴だ。

 

ヤマハは1年前に比べサブスコアがそろって上昇

首位ヤマハの9月30日時点のESGスコアは、1年前の68.19点から3.29ポイント上昇した。サブスコアを1年前と比べると、環境が67.87点から72.38点に、社会は66.39点から66.48点に、企業統治は69.54点から74.57点に上がった。3分野では環境と企業統治のスコア上昇が目立つ。

ヤマハのホームページの開示資料によると、経営の監督と執行の分離を明確にするために、2017年6月に指名委員会等設置会社に移行し、現在の取締役会の構成は8人中6人を独立社外取締役が占める。また、代表執行役社長の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置しており、22年3月期は10回開催。グループ全体のサステナビリティ活動の方向性の議論や、各部門における取り組み状況をモニタリングしている。こうした施策がESG評価に寄与しているとみられる。

一方、米エール大学経営大学院の最高経営リーダーシップ研究所のウェブサイトによると、9月29日更新時点で、ヤマハはロシアのウクライナ侵攻後も事業を継続していると判断された企業リストに含まれている(注)。今年に入ってから9月末時点までのヤマハのESGスコアの変化を見る限り、ロシアにおける事業がどの程度影響しているのかわからない。ただ、人権や企業倫理も評価項目に入っているだけに、今後のスコアの変化には注意を要するだろう。

 

ヤマハの株価は1年前に比べ大幅下落

ヤマハはESGブックのスコアでみる限り、1年前に比べ評価が高まった。一方、9月30日時点の株価をみると、5140円と、3カ月前に比べ8.2%安、1年前比では27.1%安だった。この間、東証株価指数(TOPIX)はそれぞれ1.9%安、9.6%安で、ベンチマークと比べ株価の下落が目立つ。

ESGブックは様々なESG評価の1つに過ぎないうえ、株価は企業の収益力や投資指標、材料になるニュースなど様々な要因が影響する。このため、ESG課題に関する取り組みが株価にすぐに織り込まれるとは限らない。それでもESG要因が中長期的な企業価値に影響を与えるとみられており、ESGスコアが上昇した背景を探る意味があるだろう。

QUICKリサーチ本部プリンシパル ESG研究所エディター 遠藤大義