ESG研究所【ESGブック】開示基準のアルファベットスープ解消に前進

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今回は2023年のサステナビリティ関連の企業情報開示のフレームワークやスタンダードについて、グローバルな動向をまとめたい。弊社のリサーチ部のアイシュワリャ・ラマニ、モヒト・ゴール、ヤミニ・パンデイによるレポートから関連する内容を紹介する。

上の表で、グローバルなサステナビリティに関連する情報開示において2023年以降の重要なイベントを取り上げた。各国または各市場単位でも、サステナビリティ関連の情報開示が企業に求められているので、企業の情報開示への負担はさらに増えることになる。

このような状況の中、すでにグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)の「2021スタンダード」は2023年1月1日に発効しており、各企業のサステナビリティ報告はこれに沿って開示されることとなる。「ESGブック」のプラットフォームにおいても開示対応しているので、ぜひご活用頂きたい。同様に、欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)が同年1月5日に発効した。CSRDについては2024年の企業の活動内容を2025年から報告・開示することとなる。

そして6月には、IFRS財団傘下の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準と欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)が最終決定される見込みだ。 欧州委員会は最終的なESRSをEU委任法(政令)として採用すると発表した。

またIFRS財団評議員会議長のエルッキ・リーカネン氏は今年1月にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、ISSBが6月までにS1(サステナビリティ関連財務情報開示に関する全般的要求事項)とS2(気候関連開示)の両基準を最終決定することで進めていると言及した。ISSBのS1とS2の両基準は2024年1月以降に発効される見込みだ。さらにGRIの鉱業セクターのスタンダードが今年の第4四半期に発効予定である。

このようにサステナビリティ関連の情報開示を取り巻く環境は目覚ましく進化し、2022年は情報開示の推奨事項やスタンダードの整理・合理化、報告プロセスの簡素化が明確になった。GRIのセクター別スタンダードや自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のドラフトのように新たなフレームワークやスタンダードが発表され、既存のフレームワークやスタンダードにも推奨事項の更新や改訂が行われた。

2023年も情報開示の進化が続くなか、ISSBとCSRDのスタンダードが最終段階に入り、ESG指標の収束が期待される。これはサステナビリティ報告基準のグローバルなベースラインの誕生を意味する。

サステナビリティ情報開示には、環境や社会が企業財務に与える影響を捉えようとする「シングルマテリアリティ」と、それに加えて企業が環境と社会に与える影響についても捉えようとする「ダブルマテリアリティ」というアプローチの違いもある。このような解決すべき課題はあるものの、企業の報告プロセスの合理化、フレームワークとKPI(重要評価指標)の「アルファベットスープ」と呼ばれる乱立の整理に重要なステップになるであろう。

(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)