ESG研究所【ESGブック】個別企業ダッシュボードをアップデート

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ESGブックは企業の非財務情報を定量的に評価し、対象企業のスコアを毎日算出し、プラットフォームを通じて公開している。今回はESGブックのプラットフォームで個別企業の情報をひとまとめにして表示する「ダッシュボード」に追加された新しい機能を紹介したい。

 

(画像1)ESGブックの新しい個別企業のダッシュボードのイメージ

 

個別企業のダッシュボードは画像1のように変わった。企業のスコアは上段に企業の開示情報をベースにしたスコア(Performance Score)、下段に企業に関するメディアのニュースやNGO(非政府組織)のリリースなどの影響を反映したスコア(Performance Score+)の2種類を表示するようになった。

 

(画像2)ドリル・ダウン機能①

 

さらに大きな特徴は、スコアの内容を掘り下げる(ドリル・ダウン)機能を追加したことである。ドリル・ダウン機能は複数段階に分かれている。画像2はトップのスコアを構成するESG(環境・社会・ガバナンス)の中のEの内訳の表示である。画像の企業、インドの通信会社バーティ・エアテル(Bharti Airtel)のEのスコアは60.03で、その内訳がCategoriesの下に列記されている。

Eのスコアは8つのカテゴリーから構成されていて、それぞれのカテゴリーのスコアが表示されている。Performance Score+の隣の列がNews Impactで、メディアやNGOによるニュースやリリースの影響を数値化している。同社の場合は材料の調達と効率(Materials Sourcing & Efficiency)と製品設計とライフサイクル管理(Product Design & Lifecycle Management)のカテゴリーでプラスとなるニュース等が最近あったことがわかる。

News Impactの隣がSector Percentile(セクター内の位置付け)、そしてWeight(マテリアリティ・ウェイト)となっている。Weightについては、色付けがされている数(最大3つ)によってウェイトの高いまたは低いカテゴリーを示している。同社の場合はWeightの高いカテゴリーのスコアは高い水準となっているが、前述のWeightの高い2つのカテゴリーにおいてプラスのNews Impactが発生している。

 

(画像3)ドリル・ダウン機能②

 

画像2では、ESGスコアのうちのEを例にした。これは、これまでのESGスコアのサブスコアに該当する。今回の新しい機能では、米サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の5つの領域(Dimension)のスコアも算出することにした。5つの領域は、環境(Environment)、社会資本(Social Capital)、人的資本(Human Capital)、ビジネスモデルとイノベーション(Business Model & Innovation)、そしてリーダーシップとガバナンス(Leadership & Governance)だ。

バーティ・エアテルを例にすると、環境(Environment)の領域のスコアは61.51で、6つのカテゴリーで構成されている。画像2で示されたEのサブスコアのカテゴリーよりも2つ少ないカテゴリー構成である。そして、News Impactによる影響は見られず、Weightは、エネルギー管理(Energy Management)が最も高いWeightのカテゴリーとなっている。

このように、ダッシュボード上で、各サブスコアとそれを構成するカテゴリーのスコアやNews Impact、Weightを確認することができる。さらに、SASBの領域をベースにした5つの領域のスコアと、それぞれの領域を構成するカテゴリーのスコア、News Impact、Weightを確認することもできる。

 

(画像4)ドリル・ダウン機能③

 

今回の新機能ではさらに深掘りすることが可能となっている。カテゴリーのスコアの元となるデータ項目の評価を確認できる。画像4は、環境の領域を構成するカテゴリーであるエネルギー管理(Energy Management)のスコアの元となるデータ項目とその評価を示している。その他のカテゴリーをクリックすると同様の内容が確認できる。

 

(画像5)ベンチマーキング

 

新機能の紹介の最後としてベンチマーキングを説明したい。これまでもESGブックのプラットフォームにおいて、ポートフォリオの機能を使うことで他社とのベンチマーキングをすることは可能であった。しかし、今回はベンチマーキングの機能を画像5のように新たに組み入れた。

画像5では比較対象の企業を当該企業の業種や時価総額からESGブックが選択しているが、この比較対象企業を画像6のようにユーザーが選ぶこともできる。最大20社まで選ぶことができ、何回でも変更することが可能である。

 

(画像6)ベンチマーキングの比較対象企業の選択機能

 

このようにESGブックのプラットフォームの企業向けのダッシュボードでは新しい機能が追加された。多くの機能は有償となるが、無料の登録でも多くのESGに関する各社のデータを確認することができるので、ぜひアクセスして頂きたい。次回以降、ESGブックのスコアのアップデートについても詳しく説明する。

(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)