ESG研究所【調査資料】ESG投資実態調査2024~機関投資家、「投資先の全対象企業と対話」が進む、人材の育成や多様性に高い関心~

QUICK ESG研究所は2024年12月26日、日本に拠点を置く機関投資家を対象に実施した「ESG投資実態調査2024」を公表した。機関投資家が投資先企業と行う「エンゲージメント(建設的な対話)」に関して、すべての投資対象企業と実施したとの回答が増加。そのテーマについては、「人的資本」と「取締役会の構成」がともに過半の回答を集めた。今回のアンケートから、人材の育成や多様性への関心が高いことがうかがわれた。

 

エグゼクティブサマリー

「エンゲージメント」の実施、回答者の80%

  • 機関投資家が実行している投資手法のうち上位を占めたのは、ESG要因を投資分析や決定に組み込む「ESGインテグレーション」で、昨年より1ポイント上昇して91%に達し、2年連続で首位になった。次いで「エンゲージメント」(80%)、「議決権行使」(75%)が続き、これら上位3手法が、割合や順位の変動があるものの、21年から4年連続で同じ顔触れになった。
  • 企業との対話が少しずつ進んでいることもわかった。「エンゲージメント」をすべての投資対象企業と実行できたとの回答は32%で、昨年から5ポイント上昇した。一方、「対象企業のうち実行できない会社があった」のは合計51%と4ポイント低下した。内訳は「自社の経営資源が不十分」(24%)、「対象企業の対応が不十分」(15%)、「自社の経営資源・対象企業の対応ともに不十分」(12%)となった。

「エンゲージメント」のテーマ、「人的資本」と「取締役会の構成」が過半

  • 重視している「エンゲージメント」のテーマは24年に選択肢に加えた「人的資本(人材育成・確保を含む)」が63%で2位、「取締役会の構成(説明責任や実効性含む、ESGスキルの有無など)」は56%で4位と、ともに回答した機関投資家の過半が選択した。また「生物多様性(TNFD=自然関連財務情報開示タスクフォース=対応含む)」が49%(6位)と昨年から16ポイント上昇した。
  • 投資分析や決定に組み込む要因としては、「取締役会のジェンダーの多様性」が65%(2位)と昨年から10ポイント上昇。「男女間賃金の格差などのジェンダー平等」は20ポイント上昇の51%(7位)となり、いずれも過半を超えた。また、「労働安全衛生に関する方針」が18ポイント上昇の55%(3位)、「廃棄物対策・リサイクルなどサーキュラリティ、循環型経済への対応」は33%から47%(8位)に上昇した。なお、対話のテーマ、投資判断に組み込む要因の首位はともに気候変動関連だった。

「インパクト加重会計」などのESG定量開示を評価

  • 最近、ESG活動を定量化する「インパクト加重会計」などの手法を使って、ESG活動と企業価値との関係を定量化して開示する企業が増えている。今回こうした取り組みについて尋ねたところ、「評価している」(39%)、「どちらかといえば評価している」(25%)を合わせて6割を超す機関投資家が価値を認めている。
  • 一方、ESGに関する評価の手法をESG投資に何らかの形で導入するかという設問では、「導入する予定はない」が63%を占めた。「すでに導入している」(6%)、「現在導入に向けて取り組んでいる」(6%)という機関投資家もいるが、「説明する分析ロジックや方法論が確立していない、途上である」(69%)とみる向きが多いようだ。

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