ESG研究所9月末ESGスコア首位は三井物、ダイフク20位に上昇  環境と人的資本のスコアに相関

9月末ESGスコア首位は三井物、ダイフク20位に上昇
 環境と人的資本のスコアに相関

 

アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック」による2025年9月30日時点の日本企業の「ESGパフォーマンス・スコア・プラス(EPSP)」をランキングしたところ、首位は三井物産(8031)だった。四半期末ベースでは24年12月末から4四半期連続で首位を維持した。ダイフク(6383)が20位に入り、1年前の116位から躍進したのが目を引いた。

 

 

ESGパフォーマンススコアは「SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダード(基準)」の26のカテゴリーで評価する指標(QUICK Knowledge 特設サイトでは「合計スコア」と表示)。ESGブックは「E(環境)」「S(社会)「G(ガバナンス)」の「ピラースコア」と、「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルとイノベーション」「リーダーシップとガバナンス」という5つの「ディメンションスコア」を算出している。

「コア」のスコアが企業の開示情報に基づいたものであるのに対し、「プラス」のスコアは、企業の開示情報に加え、メディアのニュースやNGO(非政府組織)などの情報を反映しており、更新頻度が高い。各スコアはそれぞれ0から100の範囲で算出され、高いほど優れていることを示す。

日本企業のEPSPの上位10社(図表1)を1年前と比べたところ、首位の三井物産(24年9月末4位)、3位のクボタ(6326、同2位)、4位の花王(4452、同3位)、5位のユニ・チャーム(8113、同8位)、8位のアサヒグループホールディングス(2502、同7位)、9位の伊藤忠商事(8001、同首位)以外の4社が入れ替わった。一方、3カ月前の25年6月末と比べると入れ替わったのはユニ・チャーム(25年6月末は14位)だけだった。

 

 

11位から20位まで(図表2)を見たところ、20位のダイフクはEPSPが71.27と1年前に比べ8.74(13.98%)上昇し、株価は4743円と同1981.5円(71.75%)上がった。ダイフクのディメンションスコア(いずれもプラススコア)をみると、「環境」が83.62と同18.54(28.49%)上昇、「社会資本」は64.28と同11.05(20.76%)上がった。ダイフクは「人的資本」も77.00と高い水準にあり(図表3)、JPX総研と日本経済新聞社が算出する「JPX日経インデックス人的資本100」の構成銘柄になっている。

 

 

ダイフクのウェブサイトで「サステナビリティニュース」をみると、25年2月14日に国際的な環境情報開示システムを運営するNPO(非営利組織)である CDPによって、気候変動に対する取り組みや情報開示の透明性が評価されて初めて最高評価「Aリスト」企業に選定されたと発表している。同年6月6日には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言に基づいて情報開示したと発表している。こうした諸々の取り組みが評価されているようだ。

 

 

ESGブックの調査対象である日本企業975社の5つのディメンションスコアの相関をマイクロソフトのエクセルのデータ分析ツールを使って調べたところ、図表4のような結果になった。環境スコアと人的資本スコアの相関係数が0.64台と最も高く、正の相関があると言えそうだ。

ESGブック(アラベスクS-Ray社)日本支店代表の雨宮寛氏が25年6月27日の寄稿で「人的資本に優れた企業は、環境面でも優れているのではないか」という仮説について検証しており(注1)、9月末の日本企業のデータもそれを裏付ける結果になった。

ESGブックが22年6月10日に公開したレポート「More Than A Buzzword」(注2)は「私たちの分析は多様性と環境パフォーマンスは密接に関連しているという前提を裏付けている」と結論付けている。雨宮氏が指摘するように例外もあるので各企業を個別に精査する必要があるが、多様性に優れた企業は総じて気候変動などの環境課題にも取り組んでいるようだ。

 

(注1)雨宮寛「【ESGブック】人的資本スコア上位企業は環境パフォーマンスも優れているか?」2025年6月27日
(注2)Min Low “More Than A Buzzword: Assessing the financial and transparency effects of corporate gender diversity” 2022 Update

(QUICK ESG研究所 遠藤大義)