ESG研究所株主提案議案(1)賛同集めたアクティビストの主張
2025年07月11日
3月期決算企業の定時株主総会が6月末までに一巡した。今後の企業価値向上に向けて企業と株主が意見を戦わせた。2025年前半に開催された総会での株主提案議案の決議状況を調べたところ、企業側が取締役会として反対を表明してもアクティビスト(物言う株主)の主張に対して多くの賛同が集まった事例が複数あった。賛成率が7割超で可決された議案があったことは特筆すべきことだろう。
QUICK ESG研究所は東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービスで25年初から5月末までに株主提案に関する取締役会意見を開示した企業と、提案した株主によるプレスリリースから約100社を抽出した。各社の定時株主総会の招集通知と総会決議結果の臨時報告書から株主提案議案を調べたところ、複数の可決例があった(表1)。
定款変更議案は3分の2以上の賛成多数が要求されるため可決のハードルが高いものの、栄研化学(4549)では配当や自社株買いなどの総会決議もできるよう定款変更を求める株主提案議案が73.11%の賛成率で可決された。ホギメディカル(3593)ではアクティビストの推薦した取締役候補3人のうち、ダルトン・インベストメンツのジェームズ・ローゼンワルド最高投資責任者が賛成率52.1%で選任された。
一方、否決されたとはいえ、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)と日本高純度化学(4973)ではそれぞれ配当などの総会決議を可能にするように定款変更を求める株主提案議案が50%近い賛同を得た。日邦産業(9913)に対する「監査委員会委員長の社外取締役からの選任を求める定款変更」の議案も賛成率が4割を超えた。
アクティビストの株主提案議案が多数の賛同を集める背景には、株式持ち合いによる安定株主減少のほか、株主価値向上の観点から個別に判断するという国内機関投資家による議決権行使基準の影響もあるとみられる。このほかアクティビストに対する個人投資家の認識の変化も見逃せないようだ。
マネックス証券が6月20日に発表した「MONEX個人投資家サーベイ 2025年6月調査」では、アクティビストの提言や提案に対するイメージについて「経営の引き締めや業績改善につながりそう」が最多の回答で、「株価上昇や株主還元の拡充につながりそう」が続く結果となった。
日経CNBCが6月18日に発表した「アクティビストは好きですか、嫌いですか」に関するアンケート結果によると、「どちらかといえば好き」が50.4%、次いで、「好き」が17.4%と、合計で7割近くが肯定的な見方を示した。アクティビストに好意的なイメージを持ち、提案ごとに是々非々で判断する個人投資家が増えてきているのではないか。
今年、株主提案議案で目立ったのは、取締役の過半数を社外取締役とするように定款変更を求めるものだ。企業統治指針「コーポレートガバナンス・コード」では東証プライム市場の上場企業に対し、独立社外取締役を3分の1位以上選任することを求めているが、それより厳しくして企業の持続的な成長と価値向上に寄与させようという主張だ。結果は、いずれも否決されたが、賛成率が2割を超えた企業もあった。(表2)
(QUICK ESG研究所 遠藤大義)