ESG研究所【ESGブック】人的資本スコア上位企業は環境パフォーマンスも優れているか?

【ESGブック】人的資本スコア上位企業は環境パフォーマンスも優れているか

7月22日より算出開始が予定されている新しい株価指数「JPX日経インデックス人的資本100指数」は、ESGブックが提供する「ESG Performance Score Core – Dimension Human Capital Score(以下、人的資本スコア)」の上位企業を対象に、3つの加点項目を考慮して選定される。本稿では、「人的資本に優れた企業は、環境面でも優れているのではないか」という仮説について検証する。

人的資本スコアは、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダードをベースに、産業別のマテリアリティ・ウェイトを考慮してスコアリングされる。そのため、本指数に選出された企業は、「従業員の健康と安全」「従業員エンゲージメント、D&I(多様性とインクルージョン)」「労働慣行」の3つの観点において、バランスの取れた取り組みを行っている企業であると考えられる。これら3つは、SASBスタンダードのディメンションの一つである「人的資本」を構成する主要なカテゴリーである。

新株価指数に採用する100社は、「JPX日経インデックス400」の構成企業の中から選ばれる。JPX日経インデックス400の人的資本スコアの上位100社、次の100社(101位〜200位)、ユニバース(JPX日経400の指数構成企業)、およびESGブックのスコア対象となる日本企業全体を比較した(表)。

 

 

表に示されたスコアからは、人的資本スコアが高い企業ほど、環境面のパフォーマンスも良好である傾向が確認された。人的資本スコアの平均は、上位100社が71.43と最も高く、次の100社が58.69、ユニバースが51.75、日本企業全体が46.01であった。環境スコアについても同様の傾向が見られ、人的資本スコア上位100社が68.37、次の100社が61.58、ユニバースが56.84、日本企業全体が51.69となっている。

この傾向は、環境ディメンションを構成する6つのカテゴリーのスコアの平均を比較しても同様であった。従って、「人的資本に優れた企業は、環境面でも優れているのではないか」という仮説は、ESGブックのスコアに基づく分析においては妥当であるといえる。

ただし、これはあくまで平均値に基づく傾向であり、例外も存在する。例えば、人的資本スコア上位100社に含まれない企業でも環境スコアが70を超える場合があり、逆に上位100社の中でも環境スコアが50を下回る企業もある。このため、サステナビリティ全体の評価においては、各企業の取り組みを個別に精査する必要があるといえる。

 

(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)