導入事例

東洋合成工業株式会社様のQUICK Workstation Astra Managerパッケージ活用術


金融機関と同じ目線で金利や為替の取引条件を分析 金利・為替の豊富なマクロシートでシミュレーション

東洋合成工業株式会社様
経理財務部財務課 課長 太田説子氏
経理財務部財務課 係長 細野恭史氏

ダイト株式会社

東洋合成工業は、日本が誇る“グローバルニッチ”のトップランナーの1社だ。半導体の回路形成に用いられるフォトレジスト向け感光材・ポリマー・高純度溶剤の生産で世界トップシェアに立つ。設備投資が企業成長の絶対条件であり、そのための資金調達は重要な経営テーマだ。同社は金融機関との交渉力向上のためにQUICK Workstation Astra Managerパッケージ(以下、Astra Manager)を導入したという。経理財務部財務課 課長の太田説子氏と係長の細野恭史氏に導入の経緯や今後の展望などを聞いた。

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QUICK Workstation Astra Managerパッケージ

「金利がある世界」で設備投資の資金を調達

事業会社が資金調達で金融機関と交渉する場合、両者が持つ情報の差である「情報の非対称性」が存在する。マクロ経済や金利・外国為替などに詳しい金融の専門家をスカウトして対応することは可能だが、それができるのはごく一部の大手企業に限られるだろう。半導体用のフォトレジスト向け感光材・ポリマー・高純度溶剤の生産で世界トップシェアを誇る東洋合成工業も例外ではない。

同社は2022年度(2023年3月期)からスタートさせた中期経営計画「Beyond500」において、2027年度までの5年間で300億円の設備投資を行う予定だ。その資金は、銀行など金融機関からの借り入れがメインとなる。多額の資金調達とマイナス金利政策の解除が、Astra Managerを導入するきっかけとなった。

同社がQUICKのWebサイトへ「金融機関と交渉するため、社内でスポットレートやフォワードレートを計算したい」と問い合わせたのは2023年12月。翌年3月、日本は約8年間続いたマイナス金利政策を解除した。同社は6月からAstra Managerのトライアル利用を開始し、3カ月間の検証の後に正式導入した。

「Beyond500でこれまでにない規模の資金調達を行うことになった時、世の中が『金利のある世界』へ変わり、我々はより精緻な調達計画を求められることになりました。金利や為替に関する専門的な知識やノウハウがなかったので、金融機関と同じ土俵で交渉に当たるために足元のデータを持ちたいと考えました」(太田氏)。

経理財務部財務課 課長 太田説子氏

外資系の金融情報サービスと比較、ニーズと費用対効果で導入を決定

同課 係長 細野恭史氏

導入にあたり、外資系のベンダーが提供する金融情報サービスと比較したという。最終的にAstra Managerを選んだのは、同社のニーズとQUICKが提供する機能や情報がマッチしていた点にあった。

「私たちは、市場金利がいくらで、金融機関がどのくらいスプレッド(基準金利に対する上乗せ幅)を乗せているかを知りたかったのです。外資系ベンダーの金融情報サービスは、グローバルな情報や数十万件の債券データがリアルタイムで入手できることが特長ですが、ランニングコストが高いうえにオーバークオリティでした」(細野氏)。

細野氏は、トライアル中に金融業界の用語が頻出することに戸惑ったという。

「私はもともと経理畑が長く、財務に来たのが約2年前でした。初めは画面に表示される言葉や、縦横のマトリクスで算出された数値の意味が分からず、トライアル中にQUICKの営業担当に教えていただきました。さらにチャットサポートも活用して理解できたので、『これは行けそうだな』と思いました」(細野氏)。

借り入れの実績を入力して金融機関の調達コストを確認

金融機関への価格交渉力を持つ決め手となったのが、Astra Managerとデータ連携して利用できる豊富なExcelマクロシート(以下、マクロシート)だ。実際に過去1年分の借り入れデータを入力したところ、金融機関の調達コストを確認できたという。


 


「金融機関は、それぞれの条件やルールに則って貸出先にレートを提示します。従来は、提示されたレートをそのまま受け入れるしかなかったのですが、これからは、そのレートが市場の金利情勢によるものか、当社の状況で判断された金利なのかを類推することができます」(太田氏)。

今後の金利上昇を勘案して試算したところ、その影響は思った以上に大きく、無視できない金額になったという。

「当社は借入金の管理システムを持っていますが、借り入れと返済の実績を把握するだけで、シミュレーション機能はありません。Astra Managerで条件を変えてシミュレーションした結果をもとに、金融機関から提示された条件の妥当性を議論できるようになったのは、大きな意味があると思います」(細野氏)。

ドルの円転コストをシミュレーションできるマクロシートも

同社にはもう一つ、解決したい課題があった。保有するドルの円転である。半導体業界は輸出産業で、同社の海外売上高比率は35%弱。余剰のドルは、スポット取引や為替予約を使って円転する。

社内レートが損を出さないようにヘッジするため、為替のオプションも検討している。そこで力を発揮するのが「マルチレグ通貨オプション」というマクロシートだ。

「金融機関が提示する条件とプレミアムの妥当性を判断したいのですが、当社には金融工学の知見がある社員はおらず、ツールもありません。しかし、このシートに条件を入力すると、金利と同様に通貨オプションの妥当性を確認できます」(細野氏)。

当社の事業成長に伴奏していただく金融機関様とお付き合いするためのツール

Astra Managerの導入と活用にあたって、細野氏はQUICKのサポート体制を高く評価している。

「金融の専門用語はチャットサポートで聞けますし、マニュアルを読めば入力方法も分かります。重要なのはアウトプットされた数値が何を意味しているか、それを理解することです。QUICKの営業担当に、出力データの読み解き方や数値の意味するところまで教えていただけたので、応用が利くところまで理解できました」(細野氏)。

太田氏も「その辺りまでしっかり理解しないと、金融機関と交渉する時に建設的な議論ができないですから」と続けた。

Astra Managerを導入して間もない同社だが、今後はより幅広く使いこなすとともに、QUICKが提供するAPI(異なるソフトウエア同士をつなぐ仕組み)を使って社内ポータルでの情報共有も検討していく。

「半導体業界は設備投資をしなければ成長できません。資金調達は最重要課題の1つです。当社の事業成長に伴奏していただく存在として、金融機関様とはお付き合いしたいのです。両者が同じ目線で合理的な取引を継続するために、Astra Managerの導入は大きな意味を持つと考えています」(太田氏)。

東洋合成工業株式会社

1954年に創業以来2024年で70周年を迎えた独立系化学素材メーカー。2022年度(2023年3月期)~5ヵ年の中期経営計画「Beyond500」を掲げ、持続可能な社会と事業成長に向けて活動している。

主力事業は半導体やフラットパネルディスプレイの製造に使用される感光性材料を供給する感光材事業および電子機器の製造に使われる高純度溶剤を供給する化成品事業。液体化学品の保管と管理を行うロジスティック事業も行っている。

感光性材料は、独自性や生産技術力、安定供給力の高い企業として、経済産業省から「2020年グローバルニッチトップ企業100選」に選出され、日本の半導体産業の未来戦略のなかでも期待の存在と言える。このような背景から、計画的な工場建設や生産設備の増強を実施している。

2024年9月には政府主催のジョブ型人事推進会議で率先的な導入事例の会社として岸田元総理より感謝状を授与されるなど、人的資本経営にも力を入れている。

今後も日本の産業を支える会社であることを念頭に据え、「Beyond500」達成を目指す。
会社名
東洋合成工業株式会社
会社名(英文)
Toyo Gosei Co., Ltd.
上場取引所
東京証券取引所スタンダード市場
株式コード
4970
資本金
16億1800万円
設立年月日
1954年9月27日
決算月
3月
売上高
319億5600万円
(2024年3月期)
代表者
代表取締役社長
木村有仁
従業員数
887名
(2024年3月末現在)
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※Microsoft、Excelは、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における商標および登録商標です。



掲載日:2024年11月29日

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