事業会社が資金調達で金融機関と交渉する場合、両者が持つ情報の差である「情報の非対称性」が存在する。マクロ経済や金利・外国為替などに詳しい金融の専門家をスカウトして対応することは可能だが、それができるのはごく一部の大手企業に限られるだろう。半導体用のフォトレジスト向け感光材・ポリマー・高純度溶剤の生産で世界トップシェアを誇る東洋合成工業も例外ではない。
同社は2022年度(2023年3月期)からスタートさせた中期経営計画「Beyond500」において、2027年度までの5年間で300億円の設備投資を行う予定だ。その資金は、銀行など金融機関からの借り入れがメインとなる。多額の資金調達とマイナス金利政策の解除が、Astra Managerを導入するきっかけとなった。
同社がQUICKのWebサイトへ「金融機関と交渉するため、社内でスポットレートやフォワードレートを計算したい」と問い合わせたのは2023年12月。翌年3月、日本は約8年間続いたマイナス金利政策を解除した。同社は6月からAstra Managerのトライアル利用を開始し、3カ月間の検証の後に正式導入した。
「Beyond500でこれまでにない規模の資金調達を行うことになった時、世の中が『金利のある世界』へ変わり、我々はより精緻な調達計画を求められることになりました。金利や為替に関する専門的な知識やノウハウがなかったので、金融機関と同じ土俵で交渉に当たるために足元のデータを持ちたいと考えました」(太田氏)。