データは研究や論文の品質に直結する 財務諸表の意味を理解する利用法を実践
経営学部
金鉉玉教授
経営学部
金鉉玉教授
2014年にオープンした東京経済大学の新図書館。国土交通省の「住宅・建築物 省CO2先導事業」のリーディングプロジェクトとして採択され、「総合的なデザインの推奨制度」のグッドデザイン賞(建築部門)も受賞。
今回、同大学経営学部・金鉉玉教授への取材は明るくモダンな建物ながらウッディなあしらいが特徴的な、この図書館で行った。企業分析に「QUICK Workstation Astra Managerパッケージ」(以下、Astra Manager)を活用している金教授はデータベースの知見が豊富で、複数のツールを使い分けているという。Astra Managerだけが持つ機能の強みを含めて、会計学教育における活用法などを聞いた。
「有価証券報告書」(有報)。ご存知の方も多いことだろう。金融商品取引法に基づいて、上場会社が事業年度ごとに作成する開示資料だ。
株式を上場している会社は各事業年度終了後、3か月以内に財務局長および上場証券取引所への提出が義務づけられている。
たくさんの数字が並んでいる分厚くて中身を理解するのが難しい書類というイメージがあるかもしれない。数字は確かに多いのだが、それ以上に初めて読む人は企業概況や事業状況など、テキストによる「定性情報」が豊富なことに驚くだろう。
多くの定性情報を含んだ有価証券報告書などの開示資料を、企業分析へどう活用すれば有効なのかーー。こんな取り組みを進めている研究者は少なくない。東京経済大学経営学部の金鉉玉教授もその1人だ。
「専門は会計学とディスクロージャーで、特にリスク情報が大きな研究テーマです。有報の定性情報で言うと『事業等のリスク』が対象の一つになります。EDINET(有価証券報告書等の開示書類をインターネットのオンライン経由で財務局に提出・受理するシステム)が開示書類全てをXBRL形式にしたのが2013年。それまでは手作業で情報を集めて、分析の基礎となるデータを作っていました」(金教授)。
事業等のリスクは、その企業の財務状態や経営成績、キャッシュフローの異常な変動など「投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク」を、一括して具体的に分かりやすく、かつ簡潔に開示することが求められている。例えば、ソフトバンクグループの有価証券報告書(2017年度)では、8ページ25項目に渡ってぎっしりとテキストで記載されている。
金教授のリスク情報研究では、有報などの財務データとテキストで記述された定性情報を組み合わせて分析し、開示されたリスク情報と企業価値との関係やその有用性を検討。当然のことながら、定量・定性いずれも膨大な企業情報を入手して加工することが必要だ。そこで活用されているのが、Astra Managerだ。