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よりビジネスに近い理論と実践を学ぶ 女子大教育の差別化に役立つ情報ツール
グルーバル
ビジネス学部
会計ファイナンス学科
山田隆教授
グルーバル
ビジネス学部
会計ファイナンス学科
山田隆教授
(*1)2011年3月~2017年3月。大学通信調べ。「実就職率」は大学院進学者を除いた卒業生に占める就職者の割合。
上品な物腰にソフトな語り口――女子大の先生を絵に書いたような雰囲気の山田隆教授。会計ファイナンス学科長として、ファンナンス基礎とコーポレート・ファイナンス、実験ファイナンスなどを担当している。
「昨年の高校生向けオープンキャンパスで『授業は厳しくやるからアルバイトやサークル活動はできないと思うよ。それでもよければ』と説明していました。そのせいか、学ぶ目的が明確で勉強熱心かつ真面目な学生が多いですね。本学でも他学科とは学生のカラーがちょっと違うかもしれません」。
ダンディなイメージとは違い、山田教授の授業はかなり厳しい。それもそのはず、山田教授は資産運用会社でファンドマネージャーとして活躍していたキャリアを持つ。担当していた投資信託の運用成績が同分類で1位になったこともある実力派の実務家教員だ。
2018年4月に開設された「会計ファイナンス学科」に入学した学生は63人(定員60人)。一般入試の実倍率は7.8倍だった。「最近の女子高校生には『良妻賢母の専業主婦』のような意識はまったくありません。一生働くという自覚をすでに持っている学生がほとんどです」(学園本部)。
昭和女子大は他の女子大に先んじてこうしたニーズに応え、語学とビジネス教育に注力することで企業や高校生からの支持を得てきた。他校の学部再編など改革が進んでくると、「そのフォーカスをより具体化した、“エッジの効いた”取り組み」(山田教授)として開設されたのが会計ファイナンス学科だ。
昭和女子大会計ファイナンス学科には2つの「日本初」がある。1つは女子大で初めて設立された学科であること。もう1つは、同じく女子大で初めて「株式仮想売買シミュレーション」を授業に導入したことである。「実務家出身の教員が多く、いわば理論と実践の架け橋となるような学びを提供するのが本学科最大の特徴です。3年次までに全員が日商簿記2級に合格できるようなカリキュラムを組むなど、1~2年次は私から見てもかなりハードな授業になっていると思います」(山田教授)。
実務家として豊富な経験を持つ山田教授が授業に導入しているのが、Astra Managerだ。QUICKのリアルタイムマーケット情報と日本経済新聞社が提供する総合経済データベース「日経NEEDS」が融合され、膨大なマーケットデータとマクロ経済情報、企業情報が超高速でダウンロードできる。2017年春に、これも女子大では日本で初めて昭和女子大が導入した。
「ファンドマネージャー時代はもちろん、博士号を取得した研究でもAstra Managerを使っていました。同様のツールは他にもありますが、Astra Managerはとくに大量のデータをまとめて素早くダウンロードできる機能が優れています。具体的には、さまざまなデータをレポート機能やスクリーニング機能を使ってExcel®に落とすことが素早く簡単にできる。上場全銘柄の10年間分100項目前後のデータをまとめてダウンロードしても数分で終わります。ダウンロードが素早くできることは教員の負担が小さくて済むメリットがあるし、研究においてもこの使い勝手の良さは重宝しました」(山田教授)。
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昭和女子大は、会計ファイナンス学科設立以前から「実験ファイナンス」の授業で株式仮想売買シミュレーションを導入していた。学生たちに人気だそうで、希望者が多いので履修は抽選になるという。株式仮想売買シミュレーションは、山田教授が30分ほどの市場シナリオを考え、現実に即した架空の銘柄やその値動き、ニュースを入力。それに応じて動く株式市場で学生たちが売買、投資成果やプロセスを研究するものだ。
「たとえば、あらかじめシナリオで用意したニュースで、ある情報が出たときに、それが株式市場や各銘柄の値動き、株価にどう反映されるかを学びます。投資の損益だけでなく、情報の読み方や有益な情報の見分け方を体得することが最大のテーマです。つまり、われわれ教員にとってシミュレーションのシナリオ作りは授業の準備。シナリオを再現するためのデータ準備が簡単スムーズかつ短時間にできることはとても大事です。そこにAstra Managerを導入した大きな意義があります」(山田教授)。
1コマ90分の授業の中で株式仮想売買シミュレーションは約30分。残り60分が、山田教授たちが行う授業の本質なのである。「仕込み(シナリオにあわせたデータの準備)が本当に大変。暴落のシナリオやそれを企業業績にどう反映させるか、景気や為替にどう反応させるかなど、株式市場には多くのファクターがありますから」。
Astra Managerによって教員の負担を極力小さくすることは、極めて合理的な取り組みと言えるだろう。
山田教授には、昭和女子大チームとして日本経済新聞社主催の「日経ストックリーグ」(*2)に参加する計画があるという。日経ストックリーグは中・高・大学生を対象にしたコンテスト形式の株式投資学習プログラム。500万円の仮想ポートフォリオを学校ごとのチームで運用し、そのプロセスで学んだことをレポートして内容を競う。
「日経ストックリーグに参加するにあたり、Astra Managerを情報ツールとして学生に開放、その使い方を広げていきたいと考えています。ITツールの新しい使い方などは若い学生の方が発見しやすいでしょうから。学生の時にAstra Managerのように時々刻々と動く株価や出来高、板情報だけでなく、為替や速報ニュース、企業が公開する生の決算財務データなどを見て分析ができるメリットはとても大きいはずです。Astra Managerを活用し、マーケットや企業の生きたデータに触れた臨場感あふれる授業を行うことによって、教育効果がより高まることを期待しています」。
山田教授には近い将来、大学の運営当局にAstra Managerによる成果をまとめて報告したい考えもある。もちろん、他学部や他学科での応用を探るためである。「会計ファイナンスだけでなくAstra Managerを活用した様々な授業への応用は今後の課題のひとつ。準備はできたので、これからが本格活用という段階です」。
(*2)学校教育の場における投資学習の一つのツールとして企画されたコンテスト形式の株式投資学習プログラム(主催:日本経済新聞社主催 対象:中学生・高校生・大学生)
長年、株式市場と対峙してきた経験を持つ山田教授には、そこから得た教育哲学がある。「株式投資で勝つには金融市場や株式の勉強だけではだめで、幅広い教養を身に付けて多種多様な“視点”を得ることが大事。社会のなかにも多くのヒントが隠れており、それに気づくための知識・教養は“生きるうえでの知恵”のようなものです。会計・ファイナンスをテーマに生きる知恵を提供できれば、学生はあらゆる業界・ビジネスで生きていく術を学ぶことができるはずです」。
株式投資の世界では常に結果を求められる。すなわち、中長期で安定的に収益を出すことだ。昭和女子大会計ファイナンス学科でいえば、学生が希望の資格を予定通りに取得することだろう。「資格取得なら専門学校で十分では」という指摘に対して、山田教授はこう反論する。「資格取得は全力でサポートします。しかし、取得が目的ではありません。取得した資格をビジネスの現場で使えるものに変えるのが本学科の目標なのです」。
四年制の女子大で、ここまでビジネスに特化した教育を実践している大学は少ない。少子化による女子大の学生獲得競争が激しい中、グローバル対応とビジネス重視の教育はいまや当然の流れとなっている。差別化のポイントは、よりビジネスに近い実践で役立つ知恵を探求するための先進性だろう。昭和女子大におけるQUICK Workstation Astra Managerパッケージの活用法は、その好事例といえそうだ。