グループ内の膨大な電力需要をとりまとめて一括で調達
事業計画策定で業務時間の4割減を体感
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
グローバル調達本部 間接材調達センター
エネルギー調達部 エネルギー購買課
主幹 仲林圭一氏
主務 天野祐司氏
主務 岡村光洋氏
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
グローバル調達本部 間接材調達センター
エネルギー調達部 エネルギー購買課
主幹 仲林圭一氏
主務 天野祐司氏
主務 岡村光洋氏
電力業界は2016年4月の小売り全面自由化以降、多種多様な事業者の参入によって競争が激化し、市場を分析するツールの重要性が高まっている。 「QUICK E-Power Polaris」(以下、Polaris)は、日本の電力事業者向け情報をオールインワンで収集・可視化・分析できるサービスで、スポット・先物価格に影響を与える発電所の稼働状況、天候などのデータに加え、関連記事も提供している。需要家である事業会社から新電力会社、ファンド組成運営会社まで幅広くご利用いただいている。 パナソニックグループの調達部門として、国内グループ全体の電力需要をとりまとめ、一括調達するパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社は、Polarisの導入でエネルギー購買課の業務が大きく変わったという。グローバル調達本部 間接材調達センター エネルギー調達部 エネルギー購買課の仲林圭一氏、天野祐司氏、岡村光洋氏にPolarisを導入した背景や狙いなどを聞いた。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社(以下、PEX)がPolarisを導入したのは2023年4月だ。
 
「電力市場や発電所などの情報を一元管理できるツールが欲しかった」「卸電力取引所の価格を予測するにあたって、経験と勘に裏付けられた予測方法ではなく、信頼性と客観性の高い第三者のデータを使用したかった」
 
エネルギー購買課で主幹を務める仲林圭一氏は導入を決めた2つの理由を説明する。
 
「弊社はパナソニックグループの調達部門として、国内事業所の電力需要の殆どを管理しています。自社が小売電気事業者として電力供給も行いながら、再生可能エネルギーの導入推進なども担っている組織です」(仲林氏)。
 
 
 
 
 
 
電力調達における重要な業務の1つが将来の価格予測だ。 エネルギー購買課の岡村光洋氏は「グループの拠点である需要家とは基本的に1年契約なのですが、私たちが小売電気事業者として電気料金を提案する際にPolarisのデータを活用しています。我々の業務で大きな時間を占めていたのは予測価格の算出と、そのための情報収集だったので、手間がかなり減りました」と話す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エネルギー購買課の天野祐司氏も「見積りの作成や、データ収集に費やす時間が劇的に減りました。体感でいえば4割減くらいでしょうか」と、Polarisの導入によって業務効率化が進んだことを実感している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「Polarisが価格を算出するために集めている様々なデータを、我々だけで集めようとしても到底無理です。集めている途中でデータが古くなれば意味がないので、Polarisにリアルタイムのデータが集約されていることは、我々にとって大きなメリットです」と天野氏、仲林氏は声をそろえる。
 
 
Polarisの導入によって価格予測に関わる負担は軽減されたが、導入前はどのような方法をとっていたのだろうか。
「担当者5~6人で価格見通しを作るのですが、それぞれが過去のデータを見ながら推定値を算出していました。属人的な業務で時間がかかっていました」(岡村氏)。
「客観的な第三者が算出した数値をベースに、我々のルールを作りたいと考えていました。現在はPolarisの長期予測(フォワードカーブ)に独自の計算を加えて、一定の手順で毎月アップデートしています」(仲林氏)。
将来の価格予測業務を効率化できたことは最大のメリットだが、データの提供元がPolarisであることが意味を持つという。
「部署内で予測価格の根拠を聞かれた時、自社調べのデータと信頼できる第三者のデータでは受け止め方が違います。我々の業務が効率化されたことの他に、需要調達計画に対して納得感が得られるようになったことで、心理的にも楽になりました」(天野氏)。
PEXは、Polarisを含む第三者のデータを盲信しているわけではない。Polarisのモデルや運用システムを精査し、自ら算出していた価格データとの整合性などを確認。その上でコストや業務効率化を勘案しながら活用している。その結果、PolarisはPEXの「共通言語」になっているそうだ。
Polarisは2023年12月に価格予測を改善・拡充した。スポット価格は最長14日先まで、フォワードカーブは最長8年先まで算出可能になった。1コマ(30分単位)の価格データをダウンロードすることもできる。
「無料トライアルを利用している時に、予測期間を延ばす予定だと聞いていました。それも導入を決めた理由の1つです。アップデートしてくれて助かりました。フォワードカーブは従来、予測期間における各月の値をダウンロードできませんでした。我々はそれを30分ごとの値に展開して使っているので、作業負担が大きくて。Polarisから30分単位のデータを入手できるようになれば、さらに効率化できます」(岡村氏)。
同社は、QUICKが金融情報ベンダーとして長年データ提供を行ってきたデータプロバイダーとしての信頼性も評価する。
「システムは安定稼働してこそ存在意義があります。金融情報サービスは決して止まることがあってはならないサービスです。私見ですが、QUICKの技術とノウハウには絶大な信頼を寄せています」(天野氏)。
パナソニックグループは、2030年までに自社グループのCO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロ、2050年までにCO2排出量を3億トン削減する長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げている。
その取り組みを中核となって進めているのがPEXだ。ゴールまでの道のりは、まだまだこれからだが、パナソニックグループにおけるPEXの存在感は自然と増していく。同時に、Polarisにかかる期待や責任も大きくなっていく。
「CO2削減のためとはいえ、電力の購入にいくらでも予算をかけられるわけではありません。再生可能エネルギーを確保するにあたって、10年、20年といった長期のフォワードカーブやその根拠となる情報は、1つの基準になるでしょう。脱炭素に関する検討のスタート地点としてもPolarisに期待しています」(天野氏)。
PEXは「Panasonic GREEN IMPACT」の実現に向かって脱炭素の取組みをリードする立場だが、多くの組織が集まれば温度差が出てくることは避けられない。
岡村氏は「本腰を入れるのはもう少し先でも間に合うだろう、と考えている組織があるのも事実です。早期に対応すれば、購入価格の選択肢が広がるはずです」と意気込む。
「電力購入の最終決定権は需要家である各事業所にありますが、我々がもっと、電力についての理解を広めていく必要があります」(天野氏)。
PEXは、固定価格買取制度を利用しない「Non-FIT」の発電所から、オフサイトPPAの仕組みで再生可能エネルギーを調達しているが、今後はさらに増やしていかなければならない。
Polarisの導入によりエネルギー購買課の業務を効率化。新たに生み出された時間と得られた知見は、新技術の開発やノウハウの共有、施策の展開など、グループ各社のCO2削減の機運をさらに深化させるために使われる。PEXにとってこの点が最も大きな価値となる。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
パナソニックグループを構成する8つの事業会社のうちの1社。知的財産、経理、調達、ブランド、品質・環境、情報システム、人事、ロジスティクス(物流)などの専門家が所属し、各領域が連携しながらオペレーションの高度化・効率化・高速化に貢献することを目指している。
エネルギー購買課は、国内のグループ各社が使用する電力の契約・購買を集約し、グループ全体に向けて最適な電力を提供している。2030年までにグループのCO2排出量を実質ゼロ、2050年までにグループのCO2排出量を3億トン削減する長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の中心的な役割を果たしている。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社のホームページはこちら
掲載日:2024年3月5日