ビッグデータによる経済・社会現象の統計分析とモデル構築などが専門の研究分野だ。例えば、2011年にタイで大洪水が起こったときに日本企業の業績にも深刻な影響が及んだように、ある地域で発生した事象が国境を越えて波及しやすくなっている。15年には金融ビッグデータにより、金融危機がグローバルにどう波及するのか、企業がどのようにつながっているのかを分析した。
FactSetのDBを導入したのは、グローバルなサプライチェーンが焦点になった紛争地の鉱物を取り上げたときだ。コンゴ民主共和国および周辺国の紛争地域で産出したレアメタル(希少金属)などの鉱物が武装集団の資金源として輸出される「紛争鉱物問題」では、消費者の資金はグローバルなサプライチェーンを通じて知らないうちに紛争に加担してしまうリスクにさらされている。
同様に、英国の大手スーパーで販売されているタイ産のエビが、人身売買や強制労働など人権を侵害している業者から仕入れたものだと指摘されるケースのように、直接は原材料に入っていなくても人道的な視点やコンプライアンス(法令順守)上の問題を指摘される場合もある。消費者や企業は「モノ」にとどまらず、ありとあらゆるものを確認しなければならない。目に見えない企業のつながり、世界規模の国境を超えた供給網を調査しなければ、どの商品を購入すべきか、どの企業に投資すべきかが判断できなくなっている。