導入事例

ダイト株式会社様のQr1活用術


海外機関投資家による突然の売却を契機に導入 新しい中期経営計画の立案に大きく寄与

ダイト株式会社
経営企画部長
高畠浩一 氏

ダイト株式会社

富山市に本拠を置き、東京証券取引所プライム市場に上場する医薬品メーカーのダイト株式会社。各種金融情報を収集したり、実質株主の動向を把握したりするために「Qr1」と「Q’s Share」を導入した。新しい中期経営計画の立案に大きく役立ち、手薄だったコーポレート部門の拡充と効率化の土台作りを簡単かつ安価に実現できたという。経営企画部長の高畠浩一氏に、導入の経緯と今後の展望などを聞いた。

ご利用中のサービス
Qr1

情報収集・分析ツールを持っていなかった!

ダイトがリアルタイムマーケット情報サービス「Qr1」を導入した背景は、金融業界出身で、2024年8月29日に最高財務責任者(CFO)に就任した大津賀健史氏がダイトのグループ企業に2023年7月に入社したことがきっかけだ。

経営企画部長の高畠浩一氏は、次のように語る。

「資本コストを意識した経営が求められている昨今、株価や金利・株主の動向など、様々な情報をスピーディに収集・分析することは欠かせません。しかし当社は、簡単かつ安価に実現するツールを持っていませんでした。そこで大津賀から紹介されたのがQr1とQ’s Shareでした」。

メガバンクの東京とニューヨークの本部で勤務していた大津賀氏は、Qr1をはじめとする国内外の金融情報ツールを熟知している。東証プライム市場に上場する自社グループが分析ツールを活用していなかったことに驚き、導入を強く勧めたという。

経営企画部長 高畠浩一 氏

 

「2023年秋に大株主だった海外の機関投資家が当社の株式を大量に売却し始め、株価が急落しました。当時、当社は海外の実質株主の動向をしっかり追えておらず、これはまずいということになり、2024年に入って直ぐ、Qr1を導入しました。同時に、国内外の実質株主情報をWebブラウザで手軽に確認できる「Q’s Share」オプションも契約しました」。


豊富で信頼性の高い企業情報とコストバランスを評価

ダイトがQr1を選んだ理由は2つある。1つは国内の企業情報が豊富で、正確性・速報性・信頼性が高いこと。「市場や地域を問わず、国内企業の情報の豊富さは外資の情報ベンダーより、日本経済新聞社グループのQUICKに分があるはずです」。

もう1つは、必要な情報に対するコストバランスが良いこと。ダイトにとって、実質株主情報を手軽に把握できるのも大きなメリットだ。

「外資ベンダーのツールでも実質株主情報を入手することは可能ですが、コストが割高です。初めから当社で十分に使いこなせるのかという問題もあります。Qr1のオプションで利用できるQ’s Shareのデータソースは、海外でも定評のある米国FactSet社。信託銀行等のカストディアンの名義に含まれる投資家を、安価で把握できます」。

自社の実質株主をタイムリーに知ることはもちろん、同業他社の株式を保有しているが自社の株式を保有していない投資家、またその逆の投資家も把握できる。

高畠氏は「アナリストによるカバレッジが少ない当社のような企業にとって、能動的な投資家アプローチを行う土台になります」と、期待を込めて語った。

国策に左右されるジェネリック医薬品市場にどう対応するか

日本の伝統的な製造業の共通課題の1つに、財務やIRなどコーポレート部門の手薄さが挙げられる。顧客と自社商品・サービスの市場に目が行きがちで、コーポレート部門は少数の兼務スタッフばかりというケースは少なくない。ダイトも同様の悩みを抱えている。

「当時、経営企画部の人員は私を含めて3人。決算などの繁忙期はどうしても残業が増えます」。ITを活用した省力化・効率化は、同社にとっても最重要課題の1つだ。

医薬品製造という業界特有の課題もある。ジェネリック医薬品(後発薬)の拡大は国策として進められてきたが、2021年度から薬価が毎年改定になるなど「作れば儲かるという時代は終わった」。創薬には長い時間と莫大な資金が必要なことから、中長期の事業計画が必要になるが、その立案も以前より難しくなったという。

「より確かなデータを用いた綿密な計画立案と、新しいKGI(重要目標達成指標)の策定が急務です」。

眼前の課題が明確なダイトでは、準備を進めてきた。大津賀氏の入社と同時に、ジェネリック業界世界最大手テバの日本法人、武田テバファーマ株式会社で代表取締役社長兼CEOを歴任するなど、製薬業界で豊富なキャリアを持つ松森浩士氏を招聘(しょうへい)。2024年7月には、松森氏、大津賀氏、高畠氏の3人が中心となって新たな中期経営計画「Daito Transformation Plan 2027」(以下、DTP2027)を策定・発表した。

新しい中期経営計画の立案に役立ったQr1

「DTP2027」では、ダイトの強みが「原薬から製剤の一気通貫生産」であることを改めて明確にし、世界最大の原薬生産・原薬輸出国である中国においても同様の体制を敷いている。

5つの大きな事業戦略として、①既存ビジネスの効率化②中国ビジネスの強化③新規ビジネスへの参入④PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化⑤人的資本への投資――を挙げ、各戦略に対する詳細な取り組みを明記した。

「2023年秋から練ってきた『DTP2027』は、これまでの中期経営計画とは質・量ともに格段の違いがあると自負しています」。

意思決定のスピードを上げるために組織も改編した。社長直轄の最高財務責任者を新設し、その配下に財務部、経営企画部(経営企画室から改組)、DX推進部(情報管理部から改組)を置いた。また、社長直属のポートフォリオマネジメント部を新設し、既存ビジネスの選択と集中を推進する。経営企画部内にはパートナーとのアライアンスを検討する事業開発機能を持たせた。

新しい中期経営計画の立案において中心となった松森氏、大津賀氏、高畠氏の3人は、いずれもプロパー社員ではない。業界環境が悪化する中、20~30回にわたるインタビューを経て多くの役職員から挙げられた問題提起に、外部からの客観的な視点も加味して、強い危機意識を共有しながら新しいダイトを生み出そうとしている。そこで重要な役割を果たすのが、「企業経営の共通言語=数値とデータ」である。

「DTP2027で開示している数値やデータ、グラフなどの情報量は、従来比で20倍近くになりました。アナリストや投資家に、具体的な施策を盛り込んだ合理的な成長ストーリーを公表しています。これを実現できたのは、Qr1のおかげです」。

システム投資の重要性を社内で根付かせる好事例に

ダイトの新しい中期経営計画立案に寄与したQr1とQ’s Shareを、実際に利用したのは経営企画部のスタッフだ。QUICKのサービスに触れるのは初めてだったが、「サポート体制が充実しており、電話で操作方法を教えていただくこともできたので、問題はありませんでした」。丁寧なサポート体制もQUICKのアドバンテージと言えそうだ。

同社が新しい経営体制へ舵を切る中で、地方の上場企業ならではの課題も見えてきたという。前述したようなコーポレート部門に対する社内意識の低さである。ダイトのように顧客と製品・サービス、サプライヤー・バイヤーがしっかりしている企業ほど、ステークホルダーとしての株主や投資家に対する社内での存在感が相対的に希薄になってしまうのだ。

その結果として、コーポレート部門のシステム投資に消極的なのは当社に限らず、“地方の中小企業あるある”なのかもしれない。高畠氏は「地方企業だからこそシステム投資が必要で、少額でも可能だということを社内カルチャーとして根付かせることが重要です。その意味でも、今回のQr1導入は好事例になりました」と手応えを感じている。

「企業経営が新しいフェーズに突入する時、必要な情報を安価に素早く収集することの重要性を改めて感じました。今回、新しい中期経営計画を立案する際にQr1とQ’s Shareの価値を理解できたので、今後はより積極的に活用していきたいと思います」。

ダイト株式会社

1942年に大東亜薬品交易統制株式会社として富山市で創業した医薬品メーカー。在留邦人が多かった東南アジア方面に富山家庭薬を輸出する統制会社として設立され、終戦後に配置用医薬品の製造や原薬の卸販売をスタート。現在はジェネリック医薬品の製造販売や医療用医薬品の受託製造を主な業務としている。

病院や薬局で処方される薬の値段=薬価は、品目ごとに国が定めている。これまで2年に一度だった薬価改定が2021年度から毎年改定になった。国が薬価をコントロールすることで社会保障費の抑制に繋げたいからだ。国はジェネリック医薬品の使用促進に取り組んでいるが、毎年の薬価改定によって医薬品業界の事業環境は厳しいものになっている。

世界最大の原薬生産・原薬輸出国である中国を含めて「原薬から製剤の一気通貫生産」がダイトの最大の強み。同社で最大の生産能力を持つ第十製剤棟を2023年12月に竣工し、2024年8月から商用生産を開始した。2024年7月に発表した新しい経営体制と新しい中期経営計画「DTP2027」により、従来より素早い意思決定とデータの利活用を進め、さらなる経営改革を実現していく考えだ。
会社名
ダイト株式会社
会社名(英文)
Daito Pharmaceutical Co., Ltd.
上場取引所
東京証券取引所 プライム市場
株式コード
4577
資本金
71億8,619万円
(2023年5月末現在)
設立年月日
1942年6月30日
決算月
5月
売上高
468億9,500万円
(2024年5月期)
代表取締役会長
代表取締役社長
大津賀 保信
松森 浩士
従業員数
1,070名
(2024年5月末現在)
ダイト株式会社のホームぺージはこちら


掲載日:2024年8月30日

QUICK のサービスは
さまざまな業種、部署で業務の効率化、高付加価値化、事務作業の軽減を実現いたします。
ぜひお問い合わせください。

QUICKからの情報発信