東京証券取引所(以下、東証)が2023年3月末、プライムとスタンダードに上場する企業に対して、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました。
一方で、この要請を受けた企業経営者は「PBRを改善するのは非常に難しい。だからこそ日本では、市場にかかわらず半数近くの企業がPBR1倍割れの状態になってしまっている」と受け止めた向きが多くありました。
果たしてそれは本当に正しい現状認識なのでしょうか。
私は「PBR1倍割れの企業の多さは明らかに異常である。この不都合な真実を企業経営者が自分事として直視しない限り、市場改革(プライム・スタンダード・グロース)は絵に描いた餅になってしまう。そして、真の市場改革を実現することはできない」という問題意識を持って、2022年7月に東証が主催した「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」第1回会合の冒頭で、PBR1倍割れの問題の深刻さについて言及しました。
なぜなら、オムロン株式会社(以下、オムロン)で役員を務めた16年間の経験を基に、企業が価値創造に向けて様々な取り組みを自発的に行うことの必要性を痛感していましたので、この思い切った発言に至ったわけです。
そして、日本企業が本来やるべきことをきちんと進めていけば、投資家からの評価は必ず上がります。本コラムでは、企業が目指すべき「サステナビリティ経営」の本質を概念的に説明したうえで、オムロンにおける具体的な取り組みを紹介することで、企業経営のあり方を考えていただく機会になれば幸いです。