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QUICK企業価値研究所

 

自動車・自動車部品セクターの特徴は?――裾野が広く大変革期にあるセクター

自動車セクターには完成車メーカーと部品メーカーがあり、いずれも開発・製造・生産・管理など拠点数が多いのが特徴です。日本経済全体や株式市場への影響力が大きいだけに、報道が先走って間違った情報が流れることも珍しくありません。だからこそ、担当アナリストには対象企業や市場を冷静に見る目と正しい情報発信が強く求められています。

拠点が多いため、とにかくメーカーの担当者に会って直接質問をぶつけることが大切です。ただぶつけるだけでは企業の言いなりのレポートしか書けません。しっかり準備し、情報収集と理論武装をします。私にとって個別取材は試合、いわば「戦い」でもあるのです。

IoT(モノのインターネット化)やEV(電動車両)の進展など、このセクターが大きな変革期にあることは皆さんご承知のとおり。アナリストが見なければならないポイントも広がっています。例えば、EVでは「モーター」「インバーター(制御装置)」「バッテリー」が三種の神器と言われます。インバーターなどは半導体の領域で、従来の自動車アナリストが見る領域からはかけ離れています。しかし、EVの性能を大きく左右するポイントであることは間違いないので、車載用の半導体を手がけるメーカーも含めてウォッチしています。

事業会社の何をどう見ている?――大局的視点で中長期の成長性をとらえる

最も大事なポイントは成長性でしょう。完成車メーカーなら、今後2~3年でどのような新車が出て、どのくらい売れそうか。もちろんメーカーは教えてくれませんから、関連情報から類推することになります。電動車両に対応する技術開発動向も「成長性」ということができます。

部品メーカーでは、系列以外の事業にどれだけリソースをかけているか。部品メーカーの系列をなくした完成車メーカーがある一方で、グループとして系列部品メーカーの事業を整理・統合している完成車メーカーや新規参入企業もあります。いずれも、ここが成長ポイントになります。

最近は、特にMaaS(Mobility as a Service=次世代移動サービス)への取り組みも見落とせません。これは自動車開発とは別次元の見方になります。多くのアナリストは短期的な収益に目がいきがちですが、セルサイド・バイサイドの両方を経験した私は、どうしても中長期の成長性の方が気になります。当社のレポートは、最終的に個人投資家が長期的な視点で読むことが多いと考えています。対象企業や市場を大局的な視点で見ないと差別化できないし、投資家の役に立たないレポートになってしまいます。

IR活動へのリクエストやアドバイス――中立公平な組織と個人の力量を見てほしい

私が担当しているのは完成車・部品メーカー合わせて18社ほど。IRの担当者は業界最大手のトヨタ自動車でも東京と本社のある豊田市に数人ずつでしょうか。中には実質1人だったり、IRの部署が東京にない完成車メーカーもあります。ごく限られた人員で膨大な情報とイベントに対応していることはよく理解しています。私は各社と良好な関係性を築くことができていると思っていますし、こちらがきちんと話をすれば誠実に対応してくれます。

大きな証券会社など、相対的にセルサイドのアナリストを優遇するのはどのセクターも同じでしょう。当社はセルサイドでもバイサイドでもないので、扱いに困ることがあるようです。しかし、だからこそ公平・中立な意見や、個人投資家まで届く情報を発信できます。この部分を高く評価してくれる企業もあります。組織だけではなく、一アナリストとして評価・対応してもらえると励みになりますし、そうありたいと思っています。

こんなところも見ています!?アナリストの5つの本音

  • •セルサイド、バイサイドの経験が大局的な分析に役立っています。
  • •個別取材での「戦い」は、一般に公開されている以上の情報を引き出すことが目的です。
  • •できるだけ新鮮な情報提供を心がけています。決算以外でのレポートをもっと書きたいのですが  時間的に難しいのが現状です。
  • •成長性は業績予想の基礎になりますが、株価の値ごろ感も見ています。
  • •業績ダウンでも、正直ベースでいつものように話していただきたい。開示情報が減ると、市場が疑心暗鬼になります。
QUICK企業価値研究所 シニアアナリスト 小西慶祐

早稲田大学政治経済学部卒、国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。みずほ信託銀行を経て、現在に至る。早大在学時はア式蹴球(いわゆるサッカー)部に所属。
体育会で培った足腰の強さを武器に数値分析だけでなく、個別取材や国内外での工場視察といったフィールドワークによる「生の情報」を大事にしながら、対象企業を判断することを信条とする。セルサイド、バイサイド双方の経験を糧とし、弊社の特長である中立・公正な立場でレポートを執筆することを心がけている。

日本証券アナリスト協会検定会員
日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会 自動車・同部品・タイヤ専門部会 評価実施アナリスト

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掲載日:2020年3月30日