一言で言うなら私はこんなアナリスト
企業活動の「全体最適」の視点から
経営戦略を眺め続けています
QUICK
企業価値研究所
シニアアナリスト
運輸セクター担当
唐木 健至
QUICK
企業価値研究所
シニアアナリスト
運輸セクター担当
唐木 健至
鉄道や空運、海運などが含まれる運輸セクターは社会のインフラを支える代表的なセクターで、業績は世界と日本の景気に連動するといってよいでしょう。歴史が長く、いわば日本の近代化とともに歩んできた企業が多くあります。
ITセクターのように成長市場とはいえず、ダイナミックな動きに欠ける部分があります。トラディショナルで日本の国策と連動して動く傾向が強いことから、私にとっては経済動向と連動して広い視点で見る面白さがありますね。
コロナ禍のダメージを最も強く受けているのは空運でしょう。2020年12月現在で国際線は通常運行には程遠い状況。鉄道も、緊急事態宣言解除後も出張・旅行を控える動きが続いており、輸送量は空前の低水準で推移しています。この状況では成長を期待するのは難しく、資金繰り確保やコスト削減など守りを固める体力勝負の時期といえます。
株価を追求するには各社の利益が重要で、そのために経営戦略やビジネスモデル、ポジショニングなどを中長期の観点で考察するようにしています。独自性を打ち出しにくいセクターではありますが、鉄道なら地域性、海運なら荷物の種類など事業ドメインは多少違ってきます。自社の強みを実際にどう生かしているのか、という点は絶えず見ています。
現在はコロナ禍や自然災害など、事業環境が頻繁に変わりやすい時代といえるでしょう。その変化に対して、戦略を柔軟に変更できているか。例えば、中期経営計画の定期的な見直しや不採算事業の動向などを気にするようにしています。特に鉄道は不動産や百貨店などさまざまな事業を行っているので、これらの事業が「全体最適」として企業価値向上に寄与しているかどうか。これにも注目していますね。
コロナ禍によって事業説明会やアナリストミーティング、見学会がほとんど中止になり、開示情報の質的低下が心配です。特に全国各地でさまざまな事業を行っている企業が多い運輸セクターでは、現地見学会で得られる情報は貴重かつ有用でした。これまで通りというのは難しいと思いますが、可能な範囲で情報提供を続けてほしい。電話・オンライン取材などで補完してもらえるとありがたいですね。
決算説明会ではどうしても数値が中心になりがち。戦略やビジネスモデルなど中長期の視点を議論できるIRの場を増やしてほしいと思っています。似たようなモデルの会社が多いセクターですが、各社の強みを生かした差別化戦略を伝えるためには、その必然性を教えてもらえるとわかりやすく伝えることができます。
これは私見ですが、IRは伝え方・見せ方よりも自社の強みと差別化ポイントという本質の部分が最も重要で、情報として期待している部分なのです。
こんなところも見ています!?アナリストの5つの本音
早稲田大学政治経済学部卒業後、野村総合研究所に入社。その後、国内のコンサルティングファームを経て、2006年にQBR(現QUICK企業価値研究所)に入社。企業アナリストとして運輸セクターを担当。現在に至る。
日本証券アナリスト協会検定会員
日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会 運輸専門部会 評価実施アナリスト
IR・経営企画向けページはこちら
掲載日:2020年12月2日