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QUICK企業価値研究所
一言で言うなら私はこんなアナリスト:カバレッジ20年以上の経験で市場と業績を冷静に見つめます QUICK企業価値研究所 シニアアナリスト 中村 宏司

 

鉄鋼・非鉄セクターの特徴は?――寡占化が進みコロナ禍の影響長引くか

端的に表現すると、寡占化が進んでいるセクターと言えるでしょう。鉄鋼には高炉メーカーと電炉メーカーの2種類があります。比較的規模が小さい電炉メーカーは未上場企業を含めて40社ほどありますが、大規模な装置産業で生産量も多い高炉メーカーは3社しかありません。自動車メーカーなどの納入先に価格決定権を握られており、この点が株式市場から評価されにくい要因の一つとなっています。

非鉄も大きく分けると製錬会社と電線メーカーの2種類があります。製錬会社5社のうち4社の予想レポートを書いていますが、非鉄においても事実上、LME(ロンドン金属取引所)に価格を決められてしまうので、利益を上げにくい構造になっています。電線メーカー各社は光ファイバーに軸足を移しており、日本企業は高機能光ファイバーに強みを持っています。

コロナ禍でさらなるアゲンストの風が吹いています。高炉メーカーでも粗鋼生産量は足元生産能力の6割程度で、7月以降の第2四半期も変わらないでしょう。

事業会社の何をどう見ている?――粗鋼生産量から納品先へシフト

かつては「鉄は国家なり」を地で行く保守的なセクターでしたが、最近のIR活動は全く違ってきました。特に開示資料の拡充が進んでおり、説明会の質疑応答をホームページで公開する企業もあります。

これまでは、世界の景気循環に合わせて需要の変動と同じように好調と不調を繰り返してきましたが、コロナ禍で一変したかもしれません。世界経済全体でコロナ禍に対応しようという流れがあり、その中で鉄鋼・非鉄の価格も再生産可能なレベルに収斂されていくという見方を持っています。

その意味でも、従来は粗鋼生産量が最大のポイントでしたが、今後は各社の注力納品先をより重視する必要がありそうです。例えば納品量のバランスが変わり、自動車メーカーが減って電機メーカーが増えていくようなことがあれば、注目に値するでしょう。

IR活動へのリクエストやアドバイス――鋼種別データの開示に期待

鉄鋼・非鉄セクターのIRは急速に進歩しています。この流れを続けながら、開示資料のさらなる情報増と長期的視点に立った現状分析に期待したいですね。例えば、日本の鉄鋼メーカーの強みは「電磁鋼板」「高張力鋼」などの高級鋼板にありますが、鋼種別データを開示している企業はほとんどありません。拡充が待たれるポイントです。

「最近はセルサイドのアナリストが取材に来てくれない」という声をお聞きします。PBR(株価純資産倍率)が相対的に低いセクターなので、セルサイドとしては注目しづらいのかもしれません。一方で、バリュー投資家を中心としたバイサイドアナリストの取材は増えているようです。このあたりの視点は重要だと思います。

私たちは、セルサイドでもバイサイドでもない中立的な立場でレポートを書きます。私自身も20年以上、このセクターを見てきました。取材に行くと、当社が独自に業績予想を集計した「QUICKコンセンサス」への注目が高まっていることを実感します。中立な立場で調査を続けていることが改めて評価されているようです。

こんなところも見ています!?アナリストの5つの本音

  • • 各社は競合他社のホームページを想像以上によく見ています。そのつもりで開示を。
  • • 長い間あまり注目されなかったセクターなので、若いアナリストは経験不足かもしれません。
  • • 大学の会計学科を卒業し、証券会社の財務部で勤務経験があります。「株価は業績を貨幣価値に変換したもの」と考えています。
  • • コロナ禍を「バリュー投資家への新しいアプローチの可能性」と前向きに捉えてはいかがでしょうか。
  • • グローバルな景気循環と業績の連動からどのように脱却するか。各社独自の取り組みに期待しています。

 

QUICK企業価値研究所 シニアアナリスト 中村 宏司

1988年、専修大学商学部会計学科卒業。コスモ証券(現岩井コスモ証券)入社。債券部、財務部を経て企業調査アナリストになる。2001年、QBR(現QUICK企業価値研究所)に入社し現在に至る。 企業調査では、コスモ証券時代からガラス・土石、鉄鋼、非鉄金属などの素材分野を担当。事業の構造変化や足元の事業動向を投資家にわかりやすく伝えるよう心がけている。

日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会 鉄鋼・非鉄金属専門部会 評価実施アナリスト

 

 

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掲載日:2020年7月27日