中小型株・IPOのアナリストは何をどう見ている?

QUICK企業価値研究所

一言で言うなら私はこんなアナリスト 自分の立てた仮説との違いを見つけていくことが
「アナリストの醍醐味」

QUICK
企業価値研究所
シニアアナリスト
中小型株・IPO
セクター担当 
清水 康之

QUICK 企業価値研究所 シニアアナリスト 清水 康之

中小型株・IPOセクターの特徴は?――玉石混交な企業群を同じルールで見る

中小型株は「ニッチ市場において第2のホンダ、ソニーを探す」というイメージがありますが、そうとも限りません。大きな市場でもよいのですが、その場合は市場シェアが重要になります。上位3位くらいに入れば、優秀な人材が集まりますし、価格決定力を持つこともできます。利益を出すようになれば、その資金を研究開発に大きく投資することもできるでしょう。

中でもIPO銘柄は、企業もトップもいわば玉石混交。社内体制が個人商店の域を出ない企業もあれば、歴史ある大企業と違わないような企業もあります。

株式を公開・上場することで、それぞれの企業を株式市場という同じルールで評価することになります。財務諸表で見えない魅力を含めて、同じルールに照らして見た時の形が本当の企業の姿です。

企業の何をどう見ている?――数字の増減を「因数分解」する

数字を見ます。トップの人柄やリーダーシップなども大事ですが、数字は成長ストーリーを描く前提条件です。私たちは、結果としての数字だけでなく増加や減少の背景を「因数分解」します。

例えば「受注が○億円増えました」だけでなく、営業人員を増やしたからなのか、特需があったのか、前期の反動増なのか。だからこそ、その理由も教えてほしい。

その意味では、トップは話し下手でも理路整然と語る方がいいと思います。

IPO銘柄に関しては、①利益水準の伸び(上場基準ぎりぎりでは…)②経営者の株式保有数(サラリーマン社長の上がりポストなのかどうか)③リードインベスターと主幹事が同じか(違うならその理由)なども見ています。

IR活動へのリクエストやアドバイス――清水流10か条

①ネガティブ質問は単に疑問点の解消のため。丁寧に教えてほしい
②アナリストレポートはPR資料や宣伝材料ではありません
③アナリストの業績予想はもともと、会社予想と違うものです
④競合他社との比較情報は恐れずに開示を(調べればすぐにわかります)
⑤取材対応には経営会議にアクセスできる人をアテンドしてほしい
⑥株式市場に注目してほしいのか情報を知られたくないのか、社内の意思統一を
⑦存在感の大きい外国人投資家向けに英文資料の拡充を
⑧「がんばります開示」はなし(根拠となる数字と合わせて開示)
⑨「強みはブランド力」はレポートを書きにくい(技術革新による無力化の可能性が高い)
⑩アナリストによって知識や能力に濃淡があることをご理解いただきたい



こんなところも見ています!?アナリストの5つの本音

  • •「御社の強みは何ですか?」の質問に「ブランドです」とだけ言われると、正直書きにくいです。「シェアがどのくらいあるか」等、工夫をしてください。
  • •説明会の質疑応答をIRサイトに載せる時、実際の内容と異なり良いように言葉を変換してしまうと、説明会に出席した方が見た時にネガティブな印象になります。
  • •他社との比較を恐れないで
  • •投資家に興味を持ってもらえるよう、自社が良く見える見せ方を努力してください。
  • •投資家が求めているのは「成長ストーリー」。アナリストレポートの究極のニーズはこれです!

QUICK企業価値研究所 シニアアナリスト 清水 康之

早稲田大学理工学部応用化学科(医用工学専攻)卒業。 1988年に国際証券(現、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。ベンチャー企業に対する投融資審査を振り出しに、法人営業や投資モデル開発、自己売買運用、公開引受、リスクマネジメントなど経験した後、社内公募制によりエクイティリサーチ部に異動。地球温暖化ガス排出権に関するプロジェクト支援部門在籍時には、経済産業省からの受託事業として「クリーン開発メカニズムを活用した代替フロン等3ガス排出抑制事業基礎調査報告書」なども執筆。2006年にQBR(現QUICK企業価値研究所)に入社、企業 アナリストとして、主にインターネット関連銘柄や中小型銘柄を担当。


日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会

通信・インターネット専門部会 評価実施アナリスト


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掲載日:2019年4月8日

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